鳥取県、ボッチャを人権学習に 障害を「本人の問題」で終わらせない教育へ

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この記事のポイント

1.鳥取県教育委員会は10月7日、2026年度の障がい者スポーツ「ボッチャ」体験教室の開催を公表した。
2.同事業は、人権学習講師派遣事業の一つで、障害への理解、自他を尊重したコミュニケーション、共生社会への人権意識を育てることを目的としている。
3.体験を「障害者スポーツをやってみた」で終わらせず、社会的障壁や合理的配慮を考える学習へつなげられるかが教育上のポイントとなる。

鳥取県

鳥取県教育委員会が10月7日に提供

鳥取県教育委員会人権教育課は10月7日、2026年度の「障がい者スポーツ(ボッチャ)体験教室」の開催について報道提供した。県は、障害の有無にかかわらずスポーツやパラスポーツの魅力を体験することを通じて、障害や障害のある人への認識・理解を深め、自他を尊重したコミュニケーションなどの力を育て、共生社会に向けた人権意識を高めることを目的としている。とりネット

この事業は、単独のスポーツ振興策ではない。鳥取県教育委員会の「人権学習講師派遣事業」の一つで、2026年度はボッチャ、車いすバスケットボールのほか、ハンセン病問題、拉致問題、デートDV、移植医療、多様な性、子どもの人権、ヤングケアラーなど15の学習事業が用意されている。県内の児童・生徒が当事者や関係者の話、体験学習を通じ、人権尊重の社会づくりのために何ができるか考える体系の中にボッチャが組み込まれている。とりネット

「障害者は大変」という理解では不十分

障害者スポーツを学校で体験する価値は、競技そのものを知ることだけではない。ボッチャは、身体を大きく動かすことが難しい競技者でも参加できるよう競技方法や用具が設計されている。そこで児童・生徒が考えられるのは、「できないことがある人に手を貸す」という一方向の福祉理解だけではなく、ルールや環境を変えることで参加できる人が広がるという仕組みである。

障害者差別解消法では、障害のある人の生活を制限する原因を本人の心身機能だけで捉えず、施設、設備、制度、慣行、考え方などの「社会的障壁」に着目する。内閣府も、障害のある人から配慮を求める意思表示があった場合、過重な負担とならない範囲で社会的障壁を取り除く合理的配慮が必要だと説明している。内閣府ホームページ

ボッチャから学校生活へ戻して考える

体験授業の後に重要になるのは、競技で得た気付きを普段の学校生活へ戻すことだ。例えば、ボールを手で投げにくい人が別の方法を使えるルールは、同じ競技に参加するための条件調整と考えられる。そこから、教室の座席、校内移動、教材、試験、行事、意思疎通などに、特定の児童・生徒を参加しにくくしている障壁がないかを考えることができる。

ここで「全員を同じ方法で扱うこと」と「全員に同じ参加機会を保障すること」は同じではない。障害特性に応じて方法を変更する合理的配慮は、特別扱いではなく、同等の機会を確保するための調整として障害者差別解消法に組み込まれている。2024年4月からは民間事業者についても合理的配慮の提供が義務となっており、児童・生徒が学校を卒業した後に利用する店舗、交通、医療、サービスなどにも関係する制度である。内閣府ホームページ

当事者を「教材化」しない配慮も

体験型人権教育には注意点もある。障害のある人を「健常者が障害を理解するための存在」としてのみ扱えば、当事者本人の意思や生活、権利が背景へ退く。障害者スポーツを学ぶ際にも、「かわいそう」「頑張っていて立派」といった感想だけに着地せず、どのような環境なら誰もが参加できるのか、本人がどのような調整を必要としているのかを考えることが必要になる。

鳥取県教育委員会は、ボッチャを人権学習講師派遣事業に組み込み、「障がいや障がいのある人に対する正しい認識や理解」と「自他を尊重したコミュニケーション」を事業目的に掲げている。体験を競技当日の楽しさだけで終わらせず、学校生活の社会的障壁や合理的配慮を児童・生徒が具体的に考える学習へ接続できれば、スポーツ体験と人権教育を結び付ける事業としての性格がより明確になる。

出典

鳥取県教育委員会「令和8年度 障がい者スポーツ(ボッチャ)体験教室を開催します」
URL:http://db.pref.tottori.jp/pressrelease2.nsf/webview/2CB73A8ECA8D8D3E49258E8100167B15?OpenDocument

鳥取県教育委員会「人権学習講師派遣事業」
URL:https://www.pref.tottori.lg.jp/290465.htm

内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答」
URL:https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html

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人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

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