【連載 2026年施行・カスハラ防止義務を読む】第1回 企業に何が求められるか

カスタマーハラスメントのイメージ画像

厚生労働省は令和8年4月24日、改正労働施策総合推進法や関係省令・告示、カスタマーハラスメント防止指針の運用を整理した通知を都道府県労働局長宛てに発出した。令和7年6月11日に公布された改正法に基づき、カスタマーハラスメント対策に関する事業主の措置義務などは令和8年10月1日から施行・適用される。これにより、顧客等からの著しい迷惑行為への対応は、企業の任意の接客対応や苦情処理の問題にとどまらず、労働者の就業環境を守る雇用管理上の義務として位置付けられることになる。

通知では、カスタマーハラスメントが労働者の個人としての尊厳を傷つけ、能力発揮を妨げるだけでなく、職場環境の悪化、生産性の低下、健康状態の悪化、休職や退職につながり得る問題であると整理している。そのため、事業主には、労働者からの相談に応じる体制の整備、対応の実効性を確保するための抑止措置、その他雇用管理上必要な措置を講じることが求められる。従来、現場担当者の経験や我慢に依存しがちだった顧客対応を、組織として支える制度へ移すことが今回の改正の大きな意味である。

特に重要なのは、カスハラに関する相談や事実確認への協力を理由として、労働者に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと明示された点である。通知は、直接被害を受けた労働者だけでなく、状況を把握した周囲の労働者からの相談も保護対象に含まれるとする。被害を訴えた人が「接客能力が低い」「現場を混乱させた」と評価されるような運用では、制度の趣旨を損なうことになる。

また、行為者は一般消費者だけではない。取引先の役員や従業員など、他の事業主側の人物が行為者となる場合も想定されており、必要に応じて相手方事業主に事実確認や再発防止への協力を求める枠組みも示された。企業にとっては、窓口設置、社内規程、対応マニュアル、研修、記録化、関係部門の連携を事前に整えることが不可欠となる。カスハラ防止義務は、単なるクレーム対応強化ではなく、働く人の尊厳を組織的に守るための人権施策として理解する必要がある。

出典

厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695607.pdf

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