1.三重県内の土地差別事案に関連し、東京弁護士会が代理人弁護士を2026年6月4日付で戒告処分としたと部落解放同盟が公表した。
2.発端となった事案では、三重県の差別解消条例第13条に基づき、一見勝之知事が当事者に「説示」を行っていた。
3.依頼者の意向を受けた専門職が差別につながる行為に関与した場合、依頼者の希望だけでは職業倫理上の正当化にならないことを示す事例となった。

東京弁護士会が戒告
三重県内での土地差別事案に関連し、東京弁護士会が教育公務員夫妻の代理人を務めた弁護士を2026年6月4日付で戒告の懲戒処分とした。部落解放同盟中央本部が10月5日に公表した。三重県連が県に情報公開請求を行い、開示された東京弁護士会懲戒委員会の議決書から処分理由が判明したという。BLL
同盟が公表した議決書の内容によれば、懲戒委員会は弁護士の行為について「明らかな部落差別であって人権侵害行為に他ならない」と認定したという。議決書全文を東京弁護士会の一般公開ページで確認できたわけではないため、処分理由の具体的内容については、情報公開で取得した文書を基にした部落解放同盟の公表として扱う必要がある。
三重県条例には行政による紛争解決手続
この事案を理解するうえで重要なのが、「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」である。三重県は2022年5月19日に同条例を公布・施行し、一部規定を2023年4月1日に施行した。条例第13条では、不当な差別を受けた人、その家族などが、相談を経ても解決が見込めない場合、知事に助言、説示またはあっせんを申し立てられる制度を設けている。三重県公式サイト
特徴的なのは、「属性情報収集等」も対象に含めていることだ。条例は、正当な理由なく、特定の人が持つ人種等の属性に関する情報で、不当な差別を助長または誘発するおそれのある情報を収集したり、その収集を依頼・受託したりする行為を定義している。土地取引に際して「その地域が被差別部落か」「相手の出身がどこか」といった情報を調べる行為は、まさにこうした制度と接点を持つ。三重県公式サイト
「依頼者に頼まれた」は正当化になるか
部落解放同盟によると、懲戒対象となった弁護士は、自らの行為について夫妻の意向に沿ったものだったとの趣旨の弁明をした。これに対し懲戒委員会は、依頼者の意向自体が不当な差別を助長するものであれば、依頼者の意向に従ったことだけでは許容されないとの判断を示し、弁護士職務基本規程との関係にも言及したという。BLL
この問題は弁護士だけに限らない。不動産業者、司法書士、調査会社、人材事業者など、依頼者から情報収集や取引を依頼される専門職にも共通する。専門職は依頼者の利益を実現する役割を持つが、その目的や手段が差別的である場合まで無条件に実行する権限が与えられているわけではない。
行政救済と専門職倫理が接続した事案
三重県条例による助言、説示、あっせんには、裁判所の判決と同じ強制力があるわけではない。しかし今回の経過では、条例に基づく調査や説示を起点として、知事による懲戒請求、弁護士会の審査へと手続が進んだ。行政による人権救済制度と、専門職団体による職業倫理上の規律が別々に機能した事例として整理できる。
今後、三重県条例の実効性を評価する際には、申立件数だけではなく、助言、説示、あっせんを行った後に差別的行為が是正されたか、再発防止策につながったかを見る必要がある。今回の事案は、土地差別を「啓発の問題」だけで扱わず、具体的な紛争解決と専門職の責任まで制度化した三重県条例の運用を検証する材料となる。
部落解放同盟中央本部「代理人を懲戒処分~『明らかな部落差別』と」
URL:https://www.bll.gr.jp/info/news2026/news20261005-3.html
三重県「『差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例』が制定されました」
URL:https://www.pref.mie.lg.jp/JINKEN/HP/m0051700058.htm
三重県「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」
URL:https://www.pref.mie.lg.jp/JINKENC/HP/37937032079.htm