福岡市、SNS人権侵害の救済支援開始 削除手続から弁護士相談まで

この記事のポイント

1.福岡市は9月7日、SNSやインターネット上の誹謗中傷、プライバシー侵害に対する救済支援事業を開始する。
2.24時間チャットボット、職員による削除手続等の伴走支援、無料弁護士相談の3段階で構成する。
3.市の支援、情報流通プラットフォーム対処法、法務局の人権救済は権限が異なり、市が投稿を直接削除する制度ではない。

福岡市のSNS人権侵害救済サポート事業

福岡市は2026年9月7日、「SNS人権侵害救済サポート事業」を開始する。対象は福岡市民で、インターネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害などに対し、24時間利用できるチャットボット、福岡市人権啓発センター職員による手続支援、弁護士による無料相談の3段階で対応する。

チャットボットでは被害状況や希望を整理し、相談先や対処方法を案内する。職員の支援では、SNS事業者等への投稿削除依頼の方法が分からない人に手続を説明し、必要に応じて関係機関を紹介する。弁護士相談は損害賠償など法的助言が必要と判断された場合が対象で、1回60分以内、年度内1回。原則として事前に市の手続サポートを利用する必要がある。

この制度と国の法律を混同しないことが重要である。2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、大規模なSNSや掲示板等の事業者に対し、削除申出窓口の整備、判断の迅速化、削除基準や運用状況の公表などを義務付ける。法律は、被害者が申し出れば必ず投稿を削除する制度ではない。被害者救済と発信者の表現の自由の双方を考慮した仕組みである。

法務局の人権擁護機関にも別の救済制度がある。法務省によると、2025年に新たに救済手続を開始した人権侵犯事件は8,207件で、このうちインターネット上の人権侵害情報は1,569件に上った。法務局は人権侵犯事件として調査し、必要に応じてサイト管理者等へ削除要請を行う場合がある。

福岡市の事業はこれら国の制度を代替するものではなく、「どこへ相談すればよいか」「どう証拠を保存するか」「削除をどう申し出るか」「弁護士へ進むべきか」が分からない被害者を適切な救済手続へつなぐ役割を持つ。ネット上の人権侵害では初動の複雑さそのものが救済への障壁となるため、今後は相談件数に加え、削除申出、専門機関、弁護士相談へ実際に接続できた割合まで福岡市が検証できるかが制度の実効性を測る材料となる。

出典

福岡市「SNS人権侵害救済サポート事業をスタート!」
URL: https://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/hodo-happyo/2026/documents/260904sns-jinken-shingai-kyusai-support-jigyo-start.pdf

福岡市「インターネット上の人権侵害に関する支援」
URL: https://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/jinkenkeihatsu/internet-jinkenshingai.html

e-Gov法令検索「情報流通プラットフォーム対処法」
URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000137

法務省「令和7年における人権侵犯事件の状況」
URL: https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00272.html

人権ニュース編集部

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