1.反差別国際運動(IMADR)は9月17日、国連人権機関で扱われたスリランカ、アフガニスタン、高齢者の権利に関する動きをまとめた。
2.アフガニスタンでは女子教育の制限や子どもの権利、スリランカでは反テロ法や過去の重大な人権侵害への説明責任が論点となった。
3.高齢者については、認知機能の低下を本人の意思決定能力の一律な否定に結び付けず、意思決定支援を整備する考え方が示された。

三つの地域・テーマに共通する「権利の主体」
反差別国際運動(IMADR)は2026年9月17日、「UN HR Updates No.45」を公開し、国連人権理事会などで取り上げられたスリランカ、アフガニスタン、高齢者の権利を紹介した。対象も制度も異なる三つのテーマだが、国家や支援者が本人に代わって決定するのではなく、本人を権利の主体として扱うという国際人権法上の課題が共通している。
スリランカについて国連側は、内戦期を含む重大な人権侵害への説明責任と制度改革を取り上げた。IMADRのまとめによると、テロ防止法をめぐって恣意的逮捕や長期間の未決拘禁、市民社会・活動家・ジャーナリストへの監視や威嚇、拘禁中の拷問や死亡などが報告されている。ここで重要なのは「治安対策の必要性」と「人権保障」が二者択一ではない点で、刑事法制を運用する場合でも適正手続や身体の自由を確保する必要があるという国連の問題提起である。
アフガニスタンでは女子教育だけではない複合的な問題
アフガニスタンに関しては、国連特別報告者リチャード・ベネット氏が、第6学年以上の女子教育が認められていない状況に加え、表現や社会参加への制約、ジェンダーに基づく暴力、強制結婚・児童婚、児童労働などを報告した。貧困家庭、農村部、障害のある子ども、宗教・民族的少数者、国内避難民や帰還者では複数の不利益が重なる可能性も指摘されている。
子どもの権利条約では教育を受ける権利だけでなく、差別の禁止、子どもの最善の利益、意見表明などが相互に関係する。したがって、アフガニスタンの問題を「女子が学校へ行けない」という一点だけで理解すると、社会参加や暴力からの保護など、同時に生じている権利制約を見落とすことになる。
認知機能の低下と意思決定能力を同一視しない
高齢者をめぐる報告では、国連独立専門家が、認知機能の低下や診断名を理由に本人の意思決定能力が当然に失われたと扱うことを問題視した。本人に代わって周囲が判断する仕組みだけを強めれば、医療、介護、財産管理、居住場所など本人の生活に直結する決定から本人自身が排除されるおそれがある。このため、意思疎通の方法を工夫しながら本人の意思形成や表明を支える「意思決定支援」の整備が論点となる。
今回のIMADRのまとめは、異なる国や世代を一つの問題として扱ったものではない。刑事司法、教育、高齢者支援という別々の制度領域で、国家や制度が誰の意思を基準に運用されているのかを確認する資料として読むことができる。
反差別国際運動(IMADR)「UN HR Updates No.45」
URL: https://imadr.net/unhrupdateno45/

