1.電話リレーサービスは、聴覚や発話に困難のある人と相手方の会話を、通訳オペレーターが手話・文字と音声の間で仲介する法律上の公共インフラである。
2.2021年7月に公共サービスとして開始され、2026年8月末の電話リレーサービス登録数は1万9,757番号となった。
3.2025年には「手話リンク」、聞こえにくい人向けの「ヨメテル」も加わった。今後はサービスの存在だけでなく、行政、医療、企業など電話依存の窓口側が利用を前提に対応できるかが課題となる。

2026年8月、登録1万9757番号
一般財団法人日本財団電話リレーサービスによると、2026年8月末の電話リレーサービス登録数は1万9,757番号となった。「手話リンク」は1,475番号、通話相手の声を文字で表示する「ヨメテル」は4,734番号となっている。
電話リレーサービスは、聴覚や発話に困難のある人が手話または文字を使い、通訳オペレーターを介して、聞こえる人とリアルタイムで電話をする仕組みである。
メールやチャットとは異なり、相手側は通常の電話として受けることができる。病院への予約、会社への連絡、行政窓口への問い合わせ、店の予約など、「電話番号しか用意されていない」場面にもアクセスできる。
2020年の法律で公共インフラへ
電話リレーサービスは以前から民間の取組として存在していたが、大きく制度が変わったのは2020年である。
同年6月、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が成立し、12月1日に施行された。法律に基づいて総務大臣が提供機関を指定し、2021年7月から公共インフラとして電話リレーサービスが始まった。
運営費は、電話提供事業者から集める負担金を原資とする交付金制度によって支えられる。
この仕組みは、電話リレーを障害者向けの任意の福祉サービスだけとして扱わず、電話という社会インフラへアクセスするための制度として位置付けた点に特徴がある。
電話できないことが生活上の障壁になる
インターネット予約やメール対応が増えたとはいえ、日本社会では現在も電話だけ、または電話を中心とする手続が多い。
病院への急な相談、勤務先への欠勤連絡、交通機関への問い合わせ、宿泊施設や飲食店への確認、行政窓口への問い合わせなどでは、即時の会話が必要になることがある。
「メールしてください」で代替できる場合もあるが、相手がメール窓口を設けていなければ使えない。返信が数日後では意味をなさない手続もある。
その意味で電話リレーサービスが扱うのは、単なる便利さではなく情報・通信へのアクセスである。
緊急通報も電話リレーで
公共インフラとしての電話リレーサービスでは、24時間365日の利用や緊急通報への対応が重要になる。
警察、消防・救急、海上保安庁などへの緊急連絡を、通訳オペレーターを介して行う仕組みが設けられている。
聴覚障害者向けにはNET119など別の緊急通報システムも存在するが、通信手段は一つに限定される必要はない。災害や事故の状況、利用者の障害特性、利用できる端末などに応じて複数のアクセス手段を持てることが安全につながる。
手話リンクは「電話番号を持つ側」も変える
2025年には、電話リレーサービスを応用した「手話リンク」の本格運用が始まった。
従来の電話リレーでは、主として利用者側がサービスへ登録し、通訳を介して一般電話へ発信する。手話リンクは、企業や自治体などがウェブサイトに専用リンクを置き、利用者がそこから手話で問い合わせられる仕組みである。
つまり、障害者側だけに「特殊なサービスへ登録して電話する」負担を負わせるのではなく、行政機関や企業側が自らアクセシブルな問い合わせ口を設置する方向へ広がっている。
2026年には宮崎県庁など自治体での導入も進んでいる。
「ヨメテル」は聞こえにくさにも対象を拡大
もう一つの変化が「ヨメテル」である。
ヨメテルは、電話相手の声をリアルタイムに文字化するサービスで、手話を主なコミュニケーション手段としない難聴者なども利用できる。24時間365日利用でき、緊急通報への対応も可能とされている。
聴覚障害といっても、全く聞こえない人、補聴器で一定程度聞こえる人、加齢によって聞こえにくくなった人、手話を使う人、文字を中心にする人などコミュニケーション方法は異なる。
通信保障を一つの方法に固定しないことが、制度を実際に使えるものにする。
通訳者が入ることへの理解も必要
電話リレーサービスでは、会話に第三者である通訳オペレーターが入る。
この仕組みを知らない電話の受け手が、営業電話や詐欺だと誤認して切断すれば、サービスは機能しない。
銀行、医療機関、行政機関など、本人確認や個人情報を扱う窓口では特に、「第三者が通話に参加している」という形式だけを理由に手続を拒否しないためのルール作りが必要になる。
通訳オペレーターは会話の当事者ではなく、本人同士のコミュニケーションを仲介する存在である。窓口側にもこの制度への理解がなければ、通信手段は整備されても実際のサービス利用へつながらない。
情報アクセシビリティ法との接続
2022年には「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が施行された。
同法は、障害者が必要な情報を十分に取得・利用し、円滑に意思疎通できるよう施策を総合的に推進することを目的としている。
電話リレーサービスは、この問題を具体的に示す制度の一つである。
電話番号を公開していることと、誰でも実際に電話を利用できることは同じではない。行政や企業が情報提供の手段を設ける際、「標準的な利用者ならアクセスできる」という設計から、異なるコミュニケーション方法を持つ利用者も使える設計へ変えていく必要がある。
2万人到達後に問われるサービスの実効性
電話リレーサービスの登録数は2026年8月末で1万9,757番号となり、2万の水準に近づいている。
今後は登録者数の増加だけでなく、どのような場面で利用されているか、行政・医療・民間サービス側が電話リレーによる通話を適切に受けられているか、緊急時に利用できることが十分周知されているかを見る必要がある。
電話を使えるかどうかは、予約や問い合わせの利便性だけではない。働くこと、医療を受けること、行政手続を行うこと、緊急時に助けを求めることにも関係する。
2021年に公共インフラとなった電話リレーサービスは、障害のある本人に通信手段を提供する段階から、電話を受ける行政機関や企業を含めた社会側のアクセシビリティを変えられるかという段階に入っている。
一般財団法人日本財団電話リレーサービス「電話リレーサービスとは」
URL:https://www.nftrs.or.jp/about
一般財団法人日本財団電話リレーサービス「情報公開」
URL:https://www.nftrs.or.jp/information
一般財団法人日本財団電話リレーサービス「2026年度」
URL:https://www.nftrs.or.jp/news/fy2026
e-Gov法令検索「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/502AC0000000053
総務省「情報アクセシビリティポータルサイト」
URL:https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/telephonerelay/
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法
URL:https://jinken-news.com/glossary/shogaisha-joho-accessibility-communication-ho/
障害者権利条約
URL:https://jinken-news.com/glossary/shogaisha-kenri-joyaku/
