1.2026年4月時点で全1,741市町村が個別避難計画を作成し始めたが、911団体は対象者に対する作成率が2割以下だった。
2.全国には福祉避難所が2万6,784か所確保されているが、誰がどこへ直接避難するかは事前調整が必要となる。
3.障害者や高齢者が一般避難所を経由せず福祉避難所へ避難するには、個別避難計画と施設側の受入体制を接続する必要がある。

内閣府と消防庁が2026年6月29日に公表した調査では、全国1,741市町村すべてで、災害時に自力で避難することが難しい高齢者や障害者などを対象とする「個別避難計画」が少なくとも1件作成された。前年調査では未作成の自治体が50団体あったため、制度導入後初めて未作成自治体がゼロになった。一方、避難行動要支援者に対する作成率が20%以下の自治体は911団体で52.3%を占め、このうち217団体は1%以下だった。調査基準日時点で計画が作成されている要支援者は101万4,017人。自治体が計画作成に着手したことと、支援を必要とする住民まで計画が届いたことは分けて見る必要がある。
個別避難計画は、2021年の災害対策基本法改正で市町村の努力義務となった。避難先だけを書く書類ではなく、避難を支援する人、連絡先、避難方法などを本人ごとに定める。内閣府は、令和元年東日本台風などで高齢者や障害者が多数被災したことを制度化の背景に挙げている。全市町村には既に避難行動要支援者名簿があり、2026年4月時点の掲載者は約669万7千人に上るが、個別の避難方法を具体化する段階には自治体間で大きな差が残る。
避難先として重要になるのが福祉避難所である。2025年10月1日時点で全国に確保されていた福祉避難所は2万6,784か所。このうち災害対策基本法上の指定福祉避難所は1万153か所、市町村との協定や届出などで確保した施設は1万6,631か所だった。福祉避難所は、高齢者、障害者、妊産婦など、一般の避難所で生活することが難しい人のための避難先だが、災害時に誰でも直接向かえる施設とは限らない。市町村が受入対象者や人数、施設の人員・設備を事前に調整することが前提となる。
内閣府は2021年のガイドライン改定で、指定福祉避難所の受入対象者を事前に特定し、個別避難計画などを通じて調整することで、一般避難所を経由しない「直接避難」を進める方針を明確にした。知的障害や発達障害などがある人では、急激な環境変化によって一般避難所への避難自体をためらう場合があるためだ。ただし、希望する要配慮者全員を直接受け入れられない場合には、一般避難所の要配慮者スペースへ一時避難し、その後に福祉避難所へ移す方法も想定されている。福祉避難所の数だけでは、直接避難できる人数や割合は分からない。
障害者権利条約第11条は、自然災害を含む危険な状況で障害者の保護と安全を確保するため、締約国に必要な措置を取るよう定める。災害時の平等は、避難所の入口を全員に同じにすることではない。移動、医療機器の電源、介助、意思疎通、環境変化への対応など、避難に必要な条件が異なる人に対し、実際に安全な場所へ到達できる経路を準備することにある。2026年度の内閣府調査で未作成自治体は解消した。次の検証対象は、作成率20%以下の911市町村で計画をどこまで広げられるか、そして作成した計画が2万6,784か所の福祉避難所や地域の支援者と実際につながっているかである。
内閣府・消防庁「避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果(令和8年4月1日現在)」
URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/r8chosa1.pdf
内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」
URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/yoshiensha.html
内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」
URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/r3_hinanjo_guideline.pdf
内閣府「指定避難所等の指定状況等の調査結果(令和7年10月1日時点)」
URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/r7_1001.pdf
e-Gov法令検索「災害対策基本法」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223
外務省「障害者の権利に関する条約」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html

