1.三菱自動車は7月27日に第5回人権委員会を開催し、人権方針改訂案やサプライチェーン調査など6項目を扱った。
2.今回は関係会社の人権アセスメントに加え、技能実習生と外国人労働者への対応状況が個別の議題となった。
3.公表資料では各議題の報告内容や是正措置までは示されておらず、人権デュー・ディリジェンスの実効性を評価するには今後の情報開示も確認する必要がある。

三菱自動車工業株式会社は2026年7月27日、代表執行役社長を委員長とする第5回人権委員会を開催した。議題は、人権方針の改訂案、サプライチェーン調査、関係会社での人権アセスメント、問い合わせへの対応状況、技能実習生への対応状況、外国人労働者への対応の6項目。人権委員会では主要な人権課題を報告・協議し、重要事項については取締役会で審議・報告する仕組みを採っている。
前回の第4回人権委員会は2025年11月25日に開催され、救済窓口の運用、サプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンス、過去の調査のフォローアップ、「ビジネスと人権」に関する全体的な取組の4項目を扱った。第5回では人権方針の改訂や関係会社のアセスメントに加え、技能実習生、外国人労働者が独立した議題として示された。対象となる労働者の属性や雇用形態を具体的に示した点は、前回までの包括的な議題設定とは異なる。
三菱自動車は人権デュー・ディリジェンスとして、国内外の事業拠点やサプライチェーンのリスクを特定・評価し、防止・軽減措置、モニタリング、情報開示を進める方針を示している。2024年度にはミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)で外部評価機関を使った人権アセスメントを実施し、会社側は事業や従業員に重大な影響を及ぼす侵害事項は確認されなかったとしている。他方、評価機関から示された改善事項については、対策の実行とモニタリングを続けている。
救済の仕組みも整備を進めている。バリューチェーン上のステークホルダーが利用できる一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)の「対話救済プラットフォーム」に参加するほか、従業員向けのグローバル内部通報窓口は14カ国、13言語に対応する。人権デュー・ディリジェンスは調査を実施するだけでは完結せず、判明した負の影響を防止・軽減し、実施状況を追跡し、必要な場合には救済へつなぐ一連の工程で評価される。三菱自動車自身も、人権侵害やその疑いが確認された場合の対応・是正措置をウェブサイトなどで開示する方針を掲げている。
今回の第5回委員会の公表資料からは、技能実習生や外国人労働者について何件の事案を確認したのか、具体的にどのような課題や改善措置を協議したのかまでは分からない。このため、議題に掲載されたこと自体から人権侵害の存在や改善状況を判断することはできない。逆に、人権委員会の実効性を検証する際には、改訂後の人権方針、関係会社やサプライチェーンで把握した課題、防止・軽減策、その後のモニタリングをどこまで外部に説明するかが材料となる。三菱自動車が第5回委員会で扱った6項目を今後の人権デュー・ディリジェンスと情報開示にどう反映するかまで継続して確認する必要がある。
三菱自動車工業株式会社「第5回人権委員会の開催について」
URL:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/sustainability/sustainabilitynews/2026/08/06_2.html
三菱自動車工業株式会社「第4回人権委員会について」
URL:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/sustainability/sustainabilitynews/2025/12/12_2.html
三菱自動車工業株式会社「人権への取り組み」
URL:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/sustainability/human_rights/index.html
ビジネスと人権
URL:https://jinken-news.com/glossary/business-and-human-rights/
人権デュー・ディリジェンス
URL:https://jinken-news.com/glossary/human-rights-due-diligence/
サプライチェーン
URL:https://jinken-news.com/glossary/supply-chain/

