長野県、10月のカスハラ対策義務化へ社内手引き公表

この記事のポイント

1. 長野県がカスタマーハラスメント対策の特設サイトと、事業者向けの社内対応マニュアル整備の手引きを公開した。
2. 2026年10月1日から、企業規模を問わず全事業主にカスハラ防止措置が義務付けられる。
3. 労働者を保護しつつ、正当な苦情や障害者による合理的配慮の申出を排除しない判断基準が必要となる。

カスタマーハラスメントのイメージ画像

長野県産業労働部は6月22日、カスタマーハラスメント対策の特設サイトと、事業者向けの「カスタマーハラスメント対策 社内対応マニュアル整備の手引き」を公開した。2026年10月1日から全事業主にカスハラ防止措置が義務付けられるのを前に、制度の説明だけでなく、各社が社内ルールを作るところまで支援する。県は2025年10月、長野労働局、長野県市長会、長野県弁護士会など計12団体と「長野県カスハラゼロ共同宣言」を実施しており、今回の公開は、共同宣言を事業所内のルールに落とし込む施策といえる。

特設サイトは、カスハラを「顧客等の言動」「社会通念上許容される範囲を超える」「労働者の就業環境を害する」の3要素をすべて満たす行為として説明する。県が2025年2~3月に実施した調査では、県内企業1,466社、労働者3,040人などを対象とし、労働者の36.2%が被害を経験した。勤務先の対策が「実施されていない」「分からない」と答えた労働者は約60%に上る。サイトには18項目の自己点検表のほか、運輸・郵送、電話対応、医療・福祉・保育、公務、小売・飲食など、業種別の対応例も掲載した。

16ページの手引きは、各事業者が自社の実情に合わせて編集・加筆する「ひな形」である。改正労働施策総合推進法に基づき、事業主が講じる措置を、方針の明確化と周知、相談体制、事後対応、悪質な行為を抑止する体制、相談者のプライバシー保護や不利益取扱いの禁止など5分野に整理した。導入手順も、社内協議から既存規程との整合確認、経営層の承認、従業員研修、運用開始、定期的な見直しまで12段階で示している。

人権上の核心は、働く人の安全と尊厳を守ることと、顧客や利用者の正当な申入れを封じないことの両立にある。手引きは、苦情のすべてがカスハラではないと明記し、商品やサービスへの正当な指摘には誠実に対応する考え方を示した。障害のある人が差別的取扱いの是正や社会的障壁の除去を申し出る行為もカスハラには当たらず、事業者には障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務がある。判断が担当者の印象だけに偏れば、カスハラ防止策が消費者の権利や障害者のサービス利用機会を狭める危険も生じる。

法施行まで約3か月となる中、掲示物を置くだけでは義務への対応にならない。県内事業者は、長野県産業労働部労働雇用課のひな形に、自社の相談窓口、上長へ交代する基準、記録様式、警察・弁護士との連携条件を具体的に書き込み、従業員への周知と研修まで実施する必要がある。長野県の手引きが実際に機能するかは、各社が10月1日までに自社用の判断基準へ落とし込めるかにかかっている。

出典

長野県「カスハラ対策特設サイト・事業者向け手引きを作成・公表しました」
URL:https://www.pref.nagano.lg.jp/rodokoyo/happyou/260622press.html

参考 長野県カスタマーハラスメントゼロ特設サイト
URL:https://nagano-cusharazero.com/

参考 厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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