1.EUの専門家委員会が、13歳未満を対象とする共通のSNSアクセス制限を提言した。
2.13歳以上の青少年には段階的な自律利用を認め、年長層への一律禁止は採用しなかった。
3.無限スクロールや推薦機能などの設計改善と、事業者側の安全立証責任を重視している。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に助言する「オンライン上の子どもの安全に関する特別委員会」は2026年7月13日、SNSやAIチャットボットなどの利用を年齢段階に応じて規制する報告書を公表した。共同議長は児童精神医学者のヨルク・M・フェーゲルト氏と疫学者のマリア・メルシオール氏。13歳未満にはEU共通のアクセス制限を設け、保護者の承認・監督下または教育目的に限って、年齢に適したサービスを時間制限付きで利用できる仕組みを提言した。
報告書は、13歳から18歳までを一律にSNSから排除する考えを採らない。13~15歳は自律性を段階的に広げ、16~18歳は年齢に適したサービスをより自律的に利用する区分とした。ただし、利用を認める対象は、無限スクロール、動画の自動再生、プッシュ通知、問題のある推薦アルゴリズムを抑制した「安全が初期設定」のサービスであることを条件とする。加盟国が13歳を超える年齢制限を設ける場合も、事業者の設計改善までの予防的措置として継続評価するよう促した。
アムネスティ・インターナショナルは7月13日の国際声明で、年長の10代への一律禁止を適切でないとした点を評価した。子どもを危険から遠ざける責任を家庭や本人だけに負わせるのではなく、依存を促す設計や行動を操作する機能を改める責任はプラットフォーム事業者にあると指摘した。報告書も、サービスが未成年者に安全であることの立証責任を事業者側へ移し、デジタルサービス法(DSA)、一般データ保護規則(GDPR)、AI法の執行を強化するよう提案している。
規制論の背景には、利用時間と心身への影響がある。欧州委員会が6月に公表したEU調査では、若者のオンライン利用は平日平均4.5時間、週末は6時間を超えた。10人中9人が眼精疲労、頭痛、集中困難など少なくとも一つの症状を経験し、約3人に1人がSNSによるストレス、悲しさ、社会的排除を報告した。ただし、時間や年齢だけで被害の有無を決めることはできない。接触する内容、推薦の仕組み、相談・通報手段、家庭環境などが重なって影響するためである。
比較対象となるオーストラリアでは、2025年12月10日から対象SNSに対し、16歳未満の利用者がアカウントを保有しないよう合理的措置を取る義務を課している。違反責任はプラットフォーム側が負い、子どもや保護者への罰則はない。EU委員会の報告は、共通下限を13歳としつつ、年齢確認、サービス設計、子どもの発達に応じた自律性を一体で扱う点で、16歳未満のアカウント保有を制限するオーストラリア制度とは異なる。
子どもの安全確保は、表現、情報へのアクセス、交流、参加の権利を一律に停止する根拠にはならない。同時に、年齢確認が身分証や生体情報の収集へ広がれば、プライバシー侵害や利用排除を生む。特別委員会は、個人を追跡・識別できない「ゼロ知識証明」などの技術を挙げ、子ども、市民団体、独立研究者を規制評価に参加させるよう示した。欧州委員会は報告書を基に夏以降の政策案を検討する予定であり、年齢制限だけでなく、事業者の設計責任と子どもの参加を法制度にどう組み込むかが次の検討事項となる。
アムネスティ・インターナショナル日本、欧州委員会、オーストラリアeSafety Commissioner
URL:https://www.amnesty.or.jp/news/2026/0716_11041.html
URL:https://commission.europa.eu/topics/digital-economy-and-society/protecting-children-online/special-panel_en
URL:https://commission.europa.eu/document/download/d833504d-5ec3-4fac-945f-38e7d0bd5326_en?filename=Special-panel-report.pdf
URL:https://www.esafety.gov.au/about-us/industry-regulation/social-media-age-restrictions

