味の素AGF、同性・異性の事実婚パートナーに休暇・社宅制度

この記事のポイント

1.味の素AGFが2026年7月1日、同性・異性双方の事実婚パートナーを対象とする社内制度を導入する。
2.慶弔、育児、介護などの特別休暇・休業制度に加え、社宅制度も適用対象とする。
3.全社員向け研修と申請情報の限定管理を並行し、制度面と職場環境の双方を整備する。

味の素AGF株式会社のパートナーシップ制度

味の素AGF株式会社(東京都渋谷区、代表取締役社長・島本憲仁氏)は、同性・異性を問わず、事実婚関係にあるパートナーを持つ従業員を対象とする「パートナーシップ制度」を2026年7月1日に導入する。対象は、パートナーと同じ住居で暮らし、生計を同一にするなど、婚姻関係と同等の状態を継続する意思がある従業員。慶弔、子ども、育児、介護、妊娠に関する特別休暇のほか、育児・介護・不妊治療、パートナーへの海外同行に伴う休業、社宅制度を適用する。

企業の福利厚生は、就業規則上の「配偶者」や「家族」が法律婚を前提としている場合、同性パートナーや事実婚の相手が対象外になりやすい。厚生労働省が公表する企業事例集にも、就業規則を改定し、事実婚と同性パートナーを法律婚と同様に扱う例が収録されている。味の素AGFの制度は、性的指向だけで対象を分けず、同性・異性双方の事実婚を同じ要件で扱う。家族の実態に即して休暇や住居支援を利用できる範囲を広げる仕組みである。

利用時の情報管理も制度の実効性を左右する。同社は、申請情報を必要最低限の関係者だけで取り扱い、プライバシーに配慮するとしている。同性パートナーの存在を会社へ申告する手続きは、本人の意思に反して性的指向が周囲に伝わる「アウティング」への不安と結びつく場合がある。制度の対象を広げても、申請先、閲覧権限、上司への共有範囲が不明確であれば、利用をためらう従業員が生じる。情報を扱う担当者を限定する方針は、その障壁を下げるための運用上の要素となる。

味の素AGFは制度導入に先立ち、2026年6月、認定NPO法人虹色ダイバーシティ理事の有田伸也氏を講師に、全社員向けオンライン講演会を実施した。導入後には短編映画の上映会と制作者とのセッションを予定し、交流会やeラーニングも検討する。2023年施行の性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進法は、事業主に対し、普及啓発、就業環境の整備、相談機会の確保などに努めるよう定めている。制度改定と研修を並行させる今回の対応は、職場制度と組織風土の双方を対象としている。

自治体のパートナーシップ制度は2025年5月末時点で人口カバー率が9割を超えたが、法律上の婚姻とは異なり、それ自体で相続や税制上の権利を生じさせるものではない。このため、職場で利用できる休暇、休業、社宅などは、各企業の規程に左右される。味の素AGFの公表資料では申請に必要な証明書類までは示されていない。7月の運用開始に当たり、同社が申請手続きと情報共有範囲を従業員へどこまで明示するかは、制度を利用しやすくする上で具体的な確認事項となる。

出典

味の素AGF株式会社「同性・異性を問わない事実婚パートナーを対象に『パートナーシップ制度』を導入」
URL:https://agf.ajinomoto.co.jp/news/2026-06-23-2291.html

PR TIMES「同性・異性を問わない事実婚パートナーを対象に『パートナーシップ制度』を導入」
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000179.000131617.html

厚生労働省「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001513395.pdf

e-Gov法令検索「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC1000000068/

渋谷区「全国パートナーシップ制度共同調査」
URL:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/shisaku/lgbt/kyodochosa.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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