日本人移民史から多文化共生を再考 かながわ国際交流財団が講座

この記事のポイント

1 かながわ国際交流財団が9月26日、日本人の海外移住史をテーマとするオンラインセミナーを開く。
2 講師は中南米への日本人移民史を研究するノートルダム清心女子大学講師の長村裕佳子さん。
3 日本人も移動する側だった歴史から、外国人住民を固定的な「外部者」とみなす意識を問い直す。

長村裕佳子さん

公益財団法人かながわ国際交流財団は2026年9月26日午前10時30分から正午まで、多文化共生セミナー「日本人も『移民』だった~移動の歴史から考える多文化共生~」をオンラインで開く。定員は120人で参加費は無料。Zoomを使用し、9月23日まで専用フォームで申し込みを受け付ける。日本へ移住する外国人だけでなく、海外へ渡った日本人の歴史から、国境を越えて暮らす人々と地域社会の関係を考える講座である。

講師はノートルダム清心女子大学講師の長村裕佳子さん。ブラジルのパラナ連邦大学大学院を修了し、ブラジルの邦字新聞「ニッケイ新聞」記者、茨城NPOセンター・コモンズ外国人支援担当コーディネーター、JICA緒方貞子平和開発研究所研究員などを務めた。専門は中南米への日本人移民史と社会学。講演では、海外移住した日本人と、1990年代以降に南米・中米諸国から来日した日系人や家族の歩みをたどる。

出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、初めて400万人を超えた。神奈川県の住民基本台帳上の外国人数も、2026年1月1日現在で30万9,815人に達し、前年から2万4,926人、8.7%増えた。国籍・地域は178に及び、中国8万4,921人、ベトナム4万3,485人、フィリピン2万7,627人など、多様化が進んでいる。外国人住民を一時的な滞在者としてではなく、仕事、教育、医療、子育て、地域活動を共に担う生活者として扱う行政・地域運営が課題となっている。

日本人の海外移住は、1866年に海外渡航禁止令が解かれてから150年以上続いてきた。1899年にはペルー、1908年にはブラジルへの移住が始まり、1924年に米国が日本人の入国を禁止すると、移住先の中心は北米から南米へ移った。JICA海外移住資料館は、第二次世界大戦前に約77万人、戦後に約26万人の日本人が海外へ移住したと説明する。移住者は言語や生活習慣の違い、受入国の政策、偏見などに向き合いながら、世代を重ねて地域社会を形成してきた。

この歴史は、移民を「日本へ来る外国人」だけで捉える見方が不十分であることを示す。日本人も経済状況や政策、家族の将来を理由に国境を越え、その子孫の一部は日系人として日本へ移動した。移動する人を出身国や国籍だけで固定的に分類すれば、本人が持つ複数の文化的背景や地域への参加を見落としやすい。日本人移民の経験を学ぶことは、外国人住民を支援の対象だけでなく、地域を構成する権利主体として捉え直す作業につながる。9月26日の講演では、長村裕佳子さんが中南米と日本を往来した人々の歩みを手掛かりに、かながわ国際交流財団が掲げる多文化共生のあり方を参加者と検討する。

出典

公益財団法人かながわ国際交流財団「日本人も『移民』だった~移動の歴史から考える多文化共生~」
URL:https://www.kifjp.org/general/2026-09

出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html

神奈川県「外国人数の推移と県民比」
URL:https://www.pref.kanagawa.jp/documents/27970/gaikokujinsujyoui8.pdf

JICA海外移住資料館「海外移住資料館について」
URL:https://www.jica.go.jp/domestic/jomm/outline/index.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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