1 相模原市の有識者会議が、令和8年度の犯罪被害者等支援の取組を協議した。
2 警察、医療機関、心理職、民生委員、市職員など、支援の入口を広げる必要性が論点になった。
3 AI相談やSNSを通じた情報到達、交通事故被害者支援の周知も議論された。

相模原市犯罪被害者等支援に係る有識者会議は令和8年5月25日、エコパークさがみはら(環境情報センター)2階学習室で会合を開き、令和7年度の支援実績、犯罪被害者等支援に関する周知・啓発の状況、そして令和8年度の取組を協議した。会議には委員8人、事務局4人が出席し、公開で行われたが、傍聴者はいなかった。
相模原市は令和5年3月20日に「相模原市犯罪被害者等支援条例」を制定し、同年4月から条例に基づく支援を開始している。制度には、犯罪被害者等ワンストップ相談・支援窓口、弁護士による無料法律相談、遺族支援金30万円、重傷病支援金、性犯罪被害支援金、カウンセリング、日常生活支援、転居費用助成などが含まれる。今回の会議では、こうした制度の有無そのものよりも、被害直後や時間が経過した後に、本人や家族が実際に支援へつながれるかどうかが中心的な論点となった。
議論ではまず、警察経由の相談を基本としつつも、警察に相談していない人、県外で被害に遭った後に相模原市内で生活している人、あるいは医療機関やカウンセリングにはつながっているものの支援制度を知らない人を、どう把握するかが扱われた。事務局からは、被害から数か月経ってから自ら相談窓口を調べ、支援につながる事例があるとの説明があった。委員からは、全国どこで被害に遭っても、居住地で速やかに支援を受けられる体制が必要だとの指摘が出された。
支援情報の到達先としては、地域の民生委員、地区社会福祉協議会、医療機関、心理職への周知も議題に上った。会議録では、相模原市内に22の地区社会福祉協議会があることに触れ、地域で困りごとを抱える人と接する機会の多い立場の人ほど、制度への理解が求められるとの発言が記録されている。心理職の委員からは、精神科医や心理職自身が犯罪被害者支援制度を知らないために、本来は相談窓口につながるべきケースが見逃されかねないという問題提起もあった。
庁内連携に関しては、東京都多摩市の取組が事例として紹介された。同市では犯罪被害に関する職員研修をローテーション制で実施し、全職員が少なくとも1回は受講できる体制を整えているという。一方、相模原市では前年度の犯罪被害者週間の講演会に市職員42人が参加したものの、事務職だけでもおよそ4000人に上るため、同じペースでは全職員が受講を終えるまでに約10年を要するとの説明があった。生活相談や保険、年金といった窓口業務の場面で職員が被害の可能性に気づけるかどうかは、行政内部の人権感度と実務研修のあり方に直結する課題といえる。
周知媒体をめぐっては、若い世代がテレビや新聞よりもスマートフォンを情報源とする傾向にあること、また相模原市が交通・地域安全課のXアカウントを活用していることが取り上げられた。さらに会議では、カウンセリングの現場で「ChatGPTに相談していた」というケースが増えているとの発言もあり、AIが被害者支援窓口への相談を後押しして実際の支援につながった例と、AIとのやり取りだけで相談が完結してしまったとみられる例の双方が示された。行政のホームページ情報は、検索エンジン経由だけでなくAI経由で参照される可能性があり、相談窓口や支援内容、対象要件を機械にも人にも分かりやすい形で示す必要性が浮き彫りになった。
制度面では、重傷病支援金の入院要件も議題となった。委員からは、相模原市の現行制度にある「入院3日以上」と「入院要件なし」という区分について、医療体制の変化を踏まえ、入院要件なしに統一する方向を検討してはどうかとの意見が出された。この議論では世田谷区、港区、川崎市、横浜市の動向にも言及があり、基礎自治体ごとの支援制度の差が被害者の回復機会に影響しうることが示された。
令和8年度の取組としては、市内4警察署への周知・協力、県、県警本部、被害者支援センターとの連携、そして庁内各部署の役割の明確化が論点となった。交通事故被害者支援に関しては、自動車事故対策機構(ナスバ)の情報が医療機関や被害者家族に確実に届いているかも取り上げられた。相模原市交通・地域安全課は、警察、医療、福祉、庁内各部署への支援情報の伝え方を、今回の会議で出された意見を踏まえて令和8年度中に検討していくことになる。
相模原市「相模原市犯罪被害者等支援に係る有識者会議の会議録」、令和8年5月25日開催会議録、相模原市「犯罪被害者等支援条例に基づく支援について」
URL:https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/shisei/1026896/shikumi/1026898/1005653/1025923.html

