1.有限会社ますいいリビングカンパニーが、川口市内の小中学校80校に絵本「さきさんのちりとんぼ」を寄贈した。
2.絵本は、ダウン症の女性が土壁材料「ちりとんぼ」制作を仕事にするまでを描いたもの。
3.障がい者雇用、伝統技術の継承、学校での多様性理解をつなぐ教材として読める。

有限会社ますいいリビングカンパニーは5月25日、川口市役所第二庁舎で、川口市内の小中学校80校に絵本「さきさんのちりとんぼ」を寄贈した。内訳は小学校52校、中学校28校。寄贈式には、同社代表取締役の伊藤真理子氏、川口市教育委員会教育長の井上清之氏らが出席した。
寄贈された絵本は、同社が2026年2月1日に出版した「さきさんのちりとんぼ ーダウン症の彼女が支える土壁の材料ー」。ますいいリビングカンパニーで働くダウン症の女性「さきさん」が、土壁材料である「ちりとんぼ」の制作を仕事にするまでの道のりを描いている。絵と文は、同社取締役の伊藤真理子氏が手がけた。
ちりとんぼは、土壁の強度を高めるために使われる材料の一つで、鉄釘に麻紐を結んで作る。発表によると、作り手の減少で左官現場でも調達が難しくなっているという。さきさんは、ちりとんぼを商品として認められる完成度まで高め、日本を代表する左官職人や左官材料屋にも評価され、商品として販売されている。
障がい者雇用を扱う教材では、就労の「機会」を語るだけでは不十分である。本人の得意な作業をどう見つけるか、周囲がどのように手順を整えるか、仕事の成果を市場や職人の評価に接続できるかが問われる。今回の絵本は、建築会社の実践を通じて、障がいのある人を支援の対象としてだけでなく、伝統技術の一部を担う働き手として描いている点に特徴がある。
学校教育の面では、多様性理解と職業理解が重なる題材となる。ダウン症、障がい者雇用、左官、土壁、伝統文化という複数の要素が一冊の絵本に含まれており、小中学生が「働くこと」を能力や効率だけで捉えない入口になる。地域企業が市内80校に教材を届ける形を取ったことで、川口市の児童生徒が、身近な企業活動と福祉、ものづくりの接点を学ぶ機会にもなる。
企業発表としては、寄贈の美談に寄せすぎない読み方も必要である。障がい者雇用は、善意や個別の成功例だけで成立するものではない。仕事内容の設計、賃金、継続的な雇用環境、本人の意思の尊重が伴って初めて、働く権利の保障につながる。ますいいリビングカンパニーの絵本寄贈は、川口市内の小学校52校、中学校28校で、障がいのある人の就労と伝統技術を同時に考える教材として扱われることになる。
有限会社ますいいリビングカンパニー
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