国際ケアと支援の日2026 無償労働と介護離職、誰がケアを担うのか

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この記事のポイント

1.国連が定める10月29日の「国際ケアと支援の日」。2026年は介護・保育などを担う人々の労働条件と、持続可能なケア制度の構築を主要テーマに掲げた。
2.国際労働機関(ILO)の推計では、2023年に無償のケア責任を理由として労働市場に参加していなかった女性は世界で約7億800万人に上る。
3.日本でも介護・看護による年間離職者は約10万6,000人。2025年施行の改正育児・介護休業法と2026年版高齢社会白書を手掛かりに、ケアを担う人と受ける人の権利を考える。

世代をつなぐ温かなケアの輪
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10月29日、国連が問いかけたケア労働の価値

2026年10月29日、国連の「国際ケアと支援の日(International Day of Care and Support)」に合わせ、国際労働機関(ILO)はスイス・ジュネーブで、持続可能なケア制度とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をテーマとする国際会合を開催した。政府、使用者団体、労働組合、国連機関などの関係者が、ケア従事者の労働条件や社会保障、サービス利用者の権利について議論する場となった。国連女性機関(UN Women)も10月28日に声明を公表し、女性に偏る無償のケア労働を認識し、その負担を減らし、公平に分担する政策の必要性を訴えた。

ケアとは、高齢者の介護や子どもの保育、病気の人の看護だけを指す言葉ではない。食事の準備、掃除、日常生活の介助など、他者の生活と健康を支える幅広い活動を含む。家庭内で無報酬で行われるものと、介護施設や保育所などで職業として提供されるものがあり、両者は異なる労働条件のもとで担われている。国際ケアと支援の日が扱うのは、こうした活動を善意や家庭の責任だけに委ねず、労働、社会保障、ジェンダー平等、人権の問題として捉えることである。

無償ケアが女性の就業機会を制約する現実

ILOが2024年に公表した推計によると、2023年時点で、育児や家族の介護、家事などのケア責任を理由に労働市場へ参加していなかった15歳以上の人は、世界で約7億4,800万人に上る。内訳は女性が約7億800万人、男性が約4,000万人だった。この数字は、実際にケアを行っている人の総数ではなく、ケア責任が労働市場に参加していない理由となっている人を推計したものである。UN Womenの2026年10月28日の声明によれば、世界の無償ケア労働の4分の3超を女性が担い、有償ケア従事者についても約65%が女性を占める。性別による負担の偏りは、本人の職業選択、収入、社会保障への加入、将来の経済的自立と関係している。

2026年10月にUN Womenと世界銀行グループが公表した政策文書では、調査対象の190経済圏のうち66経済圏で、父親に対する有給休暇の法的保障がなかった。制度が存在する経済圏でも、その半数では保障期間が2週間未満にとどまる。出産や育児の負担が女性に集中する理由を、家庭内の意識だけで説明することはできない。休暇制度の有無や給付水準、保育サービスの利用可能性など、制度上の条件も負担の分担に影響する。

ILOが示した「5R」、無償労働から働く権利へ

2026年の国際ケアと支援の日に、ILOのジルベール・ウングボ事務局長が示したのが「5Rフレームワーク」である。これは、無償ケア労働を認識する(Recognize)、負担を軽減する(Reduce)、責任を再分配する(Redistribute)という3つに、有償ケア労働に正当な報酬を与える(Reward)、従事者の意見表明と代表参加を保障する(Represent)という2つを加えた考え方だ。ILOは2024年の国際労働総会で、ケア経済に関する決議を採択し、この枠組みを国際的な労働政策に反映している。

5Rの特徴は、家庭内の無償労働と、介護職員や保育士、家事労働者などの有償労働を分けて扱いながら、両者の関係を整理している点にある。例えば、公的な介護サービスを充実させれば家族の負担を軽減できるが、そのサービスを提供する職員が低賃金や長時間労働を強いられていては、負担の移転に終わる可能性がある。ILOは2026年10月29日の声明で、とりわけ家事労働者の賃金が他の被用者の平均賃金の半分未満であると指摘した。ケアを家庭の外へ移す政策と、職業としてケアを担う人の労働条件を改善する政策は、組み合わせて考える必要がある。

日本の介護離職は年間10万6,000人、2026年版白書が示す男女差

日本の状況をみると、内閣府の「令和8年版高齢社会白書」は、家族の介護・看護を理由として2021年10月から2022年9月までの1年間に前職を離れた人が約10万6,000人だったと記載している。うち女性は約8万人で、全体の75.3%を占めた。これは2026年の離職者数ではなく、2022年の就業構造基本調査に基づく数字であり、最新の離職状況を直接示すものではない。白書では、同居している主な介護者の性別割合についても、女性68.9%、男性31.1%と報告している。

介護の現場では、家族の負担と専門職の確保という二つの課題が重なる。2026年版高齢社会白書によると、介護関係職種の有効求人倍率は2025年に4.03倍で、前年の4.07倍からわずかに低下したものの、求人に対して求職者が少ない状況が続いている。有効求人倍率とは、公共職業安定所などで扱う有効求人数を有効求職者数で割った指標であり、4.03倍は求職者1人当たり約4件の求人があることを意味する。家族が介護を担い続けることにも、外部サービスだけで負担を吸収することにも限界がある。介護人材の確保と家族の就業継続を別々の課題として扱わないことが、ILOの5Rを日本の実情に当てはめる際の手掛かりとなる。

2025年の育児・介護休業法改正、企業に新たな義務

日本では2025年4月1日、改正育児・介護休業法の介護関係規定が施行され、事業主に新たな対応が義務づけられた。主な内容は、家族の介護に直面した労働者への制度の個別周知と利用意向の確認、40歳前後の労働者への早期の情報提供、介護休業などを利用しやすくするための雇用環境整備である。企業は研修の実施、相談窓口の設置、利用事例の提供、利用促進方針の周知という4つの措置から少なくとも1つを実施しなければならない。介護の相談を受けた際には、休業制度や申出先、介護休業給付金に関する情報を個別に説明する必要がある。

介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分割して取得できる。これとは別に、介護休暇は対象家族が1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日まで取得でき、原則として時間単位の利用も可能だ。両制度は用途が異なり、厚生労働省は介護休業を、介護保険サービスの手配や家族間での役割分担など、仕事と介護を両立する体制を整える期間として活用するよう案内している。介護を必要とする家族がいる場合でも、直ちに退職を選ぶのではなく、勤務先の担当部署や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに相談する方法がある。制度を知る機会そのものを企業側から提供する2025年の法改正は、介護を担う労働者が働き続ける選択肢を確保するための仕組みである。

ケアを受ける人にも選択する権利がある

ケアに関する人権問題は、支援を提供する側の負担だけでは完結しない。介護や生活支援を受ける人が、どこで暮らし、どのような支援を利用するかについて、自らの希望を伝え、意思決定に参加できることも必要である。障害者権利条約第19条は、障害のある人が他の人と平等に居住地を選び、誰と生活するかを選択する機会を持つことや、地域生活に必要なサービスを利用する機会を保障するよう締約国に定めている。ケアを受けることと、生活の選択を他者に委ねることは同じではない。本人の意思を尊重する支援は、家族や専門職の負担軽減とは区別して考える必要がある。

国連が2023年7月24日に採択した決議77/317は、ケアを提供する人と受ける人の双方に関係する国際人権条約を踏まえ、10月29日を国際ケアと支援の日と定めた。2026年のILOとUN Womenの発信は、その考え方を労働政策と制度利用の問題へと具体化している。日本では、厚生労働省が2025年の改正育児・介護休業法に基づく企業向けの実務資料や相談情報を公開しており、労働者は職場の制度を確認できる。介護サービスの利用については、市区町村や地域包括支援センターが相談先となる。家庭内の分担、企業の両立支援、介護サービスの利用、本人の意思の尊重を結びつけることが、2026年の「国際ケアと支援の日」が示した課題への具体的な対応となる。

出典

国際連合「International Day of Care and Support」
URL:https://www.un.org/en/observances/care-and-support-day/

国際連合「決議77/317 International Day of Care and Support」
URL:https://mandates.un.org/mandate/A/RES/77/317?subject=Unpaid+Work

国際労働機関(ILO)「Building sustainable care and support systems through decent work」(2026年10月29日)
URL:https://live.ilo.org/event/building-sustainable-care-and-support-systems-through-decent-work-2026-10-29

国際労働機関(ILO)「Care workers deserve decent work, dignity and respect」(2026年10月29日)
URL:https://www.ilo.org/resource/statement/ilo-director-general-care-workers-deserve-decent-work-dignity-and-respect

国連女性機関(UN Women)「UN Women statement for the International Day of Care and Support 2026」(2026年10月28日)
URL:https://chile.unwomen.org/en/news-stories/statement/2026/10/un-women-statement-for-the-international-day-of-care-and-support-2026

国連女性機関・世界銀行グループ「From parenthood leave to childcare services: Building care systems that work for women, families and economies」(2026年10月)
URL:https://chile.unwomen.org/en/digital-library/publications/2026/10/from-parenthood-leave-to-childcare-services-building-care-systems-that-work-for-women-families-and-economies

国際労働機関(ILO)「Unpaid care work prevents 708 million women from participating in the labour market」(2024年10月29日)
URL:https://www.ilo.org/resource/news/unpaid-care-work-prevents-708-million-women-participating-labour-market

内閣府「令和8年版高齢社会白書 第1章第2節 2 健康・福祉」
URL:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/html/zenbun/s1_2_2.html

厚生労働省「育児・介護休業法について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

厚生労働省「介護休業制度 法改正のポイント」
URL:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/

厚生労働省「介護休業」
URL:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/

外務省「障害者の権利に関する条約」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html

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人権ニュース編集部

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