紛争下の子どもと教育危機 ユニセフ、学校保護の国際対応を訴え

日本ユニセフ協会は2026年2月26日、ユニセフ事務局長キャサリン・ラッセル氏が、武力紛争下の子どもの徴兵・徴用に反対する「レッドハンド・デー」に際して国連安全保障理事会の非公式会合で行った発言を紹介した。発表によれば、現在、世界の子どもの約5人に1人が、戦争や暴力的紛争が起きている国々で暮らしている。ラッセル事務局長は、教育について「命を守り、人生を変えるもの」と位置付け、学校の保護と教育機会の確保が、子どもの徴兵・徴用を防ぐ上でも重要だと訴えた。

報告では、2005年に国連安全保障理事会が紛争下の子どもに関する決議第1612号を採択して以降、学校への攻撃が1万4,000件以上、学校を軍事目的で使用した事例が3,000件以上確認されているとされた。ガザ地区では2023年以来、学校の97%が損傷または破壊の被害を受けたとされ、コンゴ民主共和国、ミャンマー、ウクライナなどでも、学校の略奪、焼失、砲撃、空爆による被害が報告されている。学校が攻撃対象となることは、子どもから学習の場を奪うだけでなく、安全な居場所、給食、保健医療、心理社会的支援といった生活基盤を同時に失わせる点で深刻である。

人権の観点から見ると、紛争下の教育保障は、単なる学校再建や授業再開の問題ではない。子どもの権利条約が掲げる生存、発達、保護、参加の権利と直結する課題であり、学校が失われることで、児童労働、児童婚、人身取引、性的搾取、武装勢力への勧誘といったリスクが高まる。とりわけ、学校が軍事拠点や武器庫として利用される場合、生徒や教職員が攻撃に巻き込まれる危険も増す。教育施設の保護は、教育政策であると同時に、子どもを暴力の連鎖から遠ざける保護政策でもある。

ユニセフは、紛争当事者に国際法の遵守を求めるとともに、各国に対して「安全な学校宣言」への賛同と実施を呼びかけている。また、避難を余儀なくされた子どもや難民の子どもを含め、公式・非公式の教育機会を広げること、補習授業や教員研修、メンタルヘルスケア、地域社会との連携を組み合わせた支援の重要性を強調している。教育を子どもの保護、和平構築、地域社会の再建と一体で考える視点は、長期化する紛争においてますます重要になっている。

日本に暮らす読者にとっても、この問題は遠い地域の人道危機にとどまらない。国際協力、難民支援、学校での平和教育、企業や団体による人道支援の在り方を考える際、子どもの教育を「復興後の課題」として後回しにしない視点が求められる。学校を守ることは、子どもが暴力に組み込まれず、社会に戻る道を保つことでもある。紛争下の教育支援を、命を守る緊急支援の一部として位置付けることが、国際社会の実務的な課題となっている。

出典
人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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