三重県が企業向けLGBTQ研修 理解促進から職場制度の改革へ

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この記事のポイント

1.三重県は2026年12月と2027年2月、企業向けに性的指向・性自認への理解と職場制度の整備を学ぶ研修を開催する。
2.2021年施行の三重県条例は、性の多様性への理解促進と、不当な差別的取扱いなどの防止を目的としている。
3.企業では、福利厚生や相談体制の整備に加え、アウティングを防ぎ、本人が望まない自己開示を強いられない制度設計が課題となる。

三重県の企業とLGBTQ~知るだけで終わらない。LGBTQへの理解から、自社の制度整備・実践まで~

知識の習得から制度の改善までを扱う研修

三重県は2026年12月11日と2027年2月4日、企業向け研修「企業とLGBTQ~知るだけで終わらない。LGBTQへの理解から、自社の制度整備・実践まで~」を開催する。

第1回はオンラインで実施し、on the Ground Project代表で株式会社エニシア代表取締役の市川武史氏が「職場の視点から考える LGBTQと性の多様性」をテーマに講義する。

第2回は津市の三重県勤労者福祉会館で、社労士事務所クラッチ代表の松葉喬行氏が「制度と実践から考える LGBTQフレンドリーな企業づくり」を解説する。

対象は企業の人事担当者やダイバーシティ推進担当者、一般社員、行政職員など。第1回は最大100人程度が視聴でき、第2回の会場定員は40人。参加費は無料で、1回だけの参加も可能となっている。

三重県条例と国の理解増進法

三重県では2021年4月1日、「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例」が施行された。同年9月1日には三重県パートナーシップ宣誓制度を開始している。

条例は、性的指向や性自認などを理由とする不当な差別的取扱いの問題や、本人の意思に反する情報開示などについて規定している。

国では2023年6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が施行された。

ただし、理解増進を目的とする法律や条例が存在することと、実際の職場で不利益な取扱いがなくなることは同じではない。

企業内部では、採用、昇進、配置転換、福利厚生、相談対応などの個別の制度が、従業員の働きやすさに影響する。

性的指向と性自認を混同しない

性的指向は、どのような性別の人に恋愛感情や性的な関心を持つかに関わる概念である。一方、性自認は、自分の性別をどのように認識しているかという概念である。

LGBTQという表現は、性的マイノリティを表す際に用いられる。一方、SOGI(性的指向・性自認)は、性的マイノリティに限らず、すべての人に関わる概念である。

企業が研修を実施する際、こうした概念を正確に理解することは、従業員の属性について誤った思い込みをしないための基礎となる。

例えば、同性のパートナーがいることと、本人の性自認が出生時に割り当てられた性別と異なることは、別の問題である。

異なる属性を一括して扱い、本人の事情を確認しないまま対応することには注意が必要となる。

アウティングを防ぐ情報管理

企業内で特に深刻な問題となり得るのが、アウティングである。

アウティングとは、本人の同意を得ずに、性的指向や性自認に関する情報を第三者へ知らせる行為を指す。

例えば、従業員から相談を受けた管理職が、配慮をするために必要だと判断し、本人の了承なく上司や同僚に情報を伝えた場合、プライバシー侵害につながることがある。

善意に基づく対応であっても、本人が望まない情報開示が正当化されるわけではない。

企業が制度上の配慮を行う際には、どの情報が本当に必要なのか、誰に共有する必要があるのか、本人の同意をどう確認するのかを整理することが課題となる。

相談窓口を整備する際にも、守秘の範囲、相談記録の取扱い、共有先などを明確にする必要がある。

パートナーシップ宣誓制度と福利厚生

三重県パートナーシップ宣誓制度は、一方または双方が性的マイノリティである2人が、互いを人生のパートナーとして協力し合うことを宣誓した場合、県が受領証等を交付する制度である。

ただし、この制度は法律上の婚姻とは異なり、婚姻と同じ権利義務を直接発生させるものではない。

企業の福利厚生では、家族手当、慶弔休暇、社宅の利用などについて、法律上の配偶者を対象とする規程が設けられている場合がある。

同性パートナーをどのように扱うかは、企業の就業規則や福利厚生制度の要件に関係する。

県の宣誓制度を利用した従業員について、受領証等を社内制度の利用要件として認めるかどうかは、企業側が検討できる事項の一つとなる。

本人からの申告を前提とする制度の限界

企業が性的マイノリティへの配慮を検討する際、本人からの申告を前提に制度を運用する場合がある。

しかし、福利厚生を利用するために、自分の性的指向や性自認を詳しく説明しなければならない制度では、プライバシーへの不安から利用を断念する人が出る可能性がある。

また、配慮を求めたこと自体が職場に知られる場合、相談窓口が存在していても利用しにくい。

このため、必要以上の個人情報を収集しないこと、本人の意思を確認すること、制度の利用要件を明確にすることが課題となる。

性的マイノリティへの配慮は、従業員に自己開示を促すことだけで実現するものではない。

職場改善の成果をどう検証するか

三重県は2022年に企業向けガイドブックを作成し、2026年3月には県職員向けの性の多様性に関するガイドラインも改訂している。

今回の連続研修は、性の多様性に関する理解を企業内の制度整備へ結び付けるための取組といえる。

ただし、研修を受講した企業数だけで成果を判断することはできない。

就業規則の見直し、相談体制の改善、福利厚生の利用条件、従業員のプライバシー保護など、実際の運用に変化があったかを確認する必要がある。

また、相談件数が少ないことをもって問題が存在しないと判断することにも注意を要する。相談制度への信頼が不足しているため、被害を申告していない可能性もあるからだ。

出典

三重県「企業とLGBTQ~知るだけで終わらない。LGBTQへの理解から、自社の制度整備・実践まで~を開催します」
URL:https://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/m0011500592.htm

出典 三重県「性の多様性を認め合う社会の推進」
URL:https://www.pref.mie.lg.jp/common/01/ci400015389.htm

出典 三重県「三重県パートナーシップ宣誓制度が始まりました」
URL:https://www.pref.mie.lg.jp/katsuyaku/86875046999_00001.htm

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人権ニュース編集部

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