1.江東区は12月9日の第78回人権週間行事で、NPO法人リメンバーハナ代表の木村響子さんによる「SNSと人権」の講演を行う。
2.SNS上の人権問題は「悪口を書かない」という情報モラルだけでなく、名誉・プライバシーと表現の自由をどこで調整するかという問題でもある。
3.子どもへの啓発では、加害防止だけでなく、被害時の証拠保存、削除依頼、相談など救済制度を利用する力まで伝える視点が必要となる。
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■木村響子さんが「SNSと人権」
江東区は2026年12月9日、江東区文化センターホールで第78回人権週間行事「守ろう人権講演とメッセージのつどい」を開催する。NPO法人リメンバーハナ代表で元プロレスラーの木村響子さんが「SNSと人権」をテーマに講演するほか、区内中学生から寄せられた人権作文177編のうち代表1作品を表彰・発表し、江東区立豊洲小学校の児童も人権メッセージを発表する。
区は木村さんについて、2020年5月にSNSでの誹謗中傷を受けた娘の木村花さんを亡くした後、誹謗中傷の被害者と加害者をなくすことを掲げて活動していると紹介している。
■「優しい言葉を使おう」だけでは足りない
SNSの人権啓発は、「相手を傷つける投稿をしない」「投稿前に考える」という情報モラル教育になりやすい。しかし、実際の問題はもっと複雑だ。批判、不快な意見、名誉を傷つける投稿、プライバシーの暴露、脅迫は同じものではない。人を不快にする表現が直ちに違法になるわけではなく、反対に「表現の自由」を理由に名誉や私生活を無制限に侵害できるわけでもない。
法務省は、インターネット上の名誉毀損やプライバシー侵害について、被害者自身による削除依頼の方法を案内し、法務局が人権侵害に当たると判断した場合にはプロバイダーなどへ削除要請を行う制度を設けている。SNS教育を人権教育として行うなら、「何を書いてはいけないか」だけでなく、表現の自由と他者の権利がどこで衝突するかを考える必要がある。
■被害者に「我慢」を教えない
もう一つの論点は被害後の対応である。「SNSを見なければよい」「気にしなければよい」という助言では、被害回復の責任を本人へ戻しかねない。投稿は転載や検索によって本人の端末外にも残り得るため、画面を閉じても問題そのものが消えるわけではない。
被害に遭った場合、投稿やURL、日時を記録する、プラットフォームへ削除を申し立てる、法務局や警察、弁護士などへ相談するといった手段がある。子どもに対しても「加害者にならない教育」だけでなく、「被害を受けたとき一人で抱え込まなくてよい」「使える救済手段がある」と伝えることが権利教育になる。
■子ども自身が発信する人権週間
今回の行事では、中学生の作文177編から選ばれた代表作品と、豊洲小学校児童によるメッセージも発表される。これは子どもをSNSの被害から守る対象としてだけでなく、人権について考え、社会へ意見を発信する主体として扱う機会でもある。
会場では車いす席3人分、手話通訳、一時保育10人程度も用意される。講演のテーマが人権であるだけでなく、障害や子育ての事情がある人も参加できる設計になっているかは、公的な人権啓発を評価する際の要素となる。江東区の12月9日の行事が、誹謗中傷の防止と同時に表現の自由、被害時の具体的救済まで扱えるかが、SNSと人権を学ぶ場としての深さを左右する。
江東区「人権週間行事『守ろう人権講演とメッセージのつどい』」
URL:https://www.city.koto.lg.jp/058802/jinkensyuukangyouji.html
法務省「インターネット上の人権侵害をなくしましょう」
URL:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken88.html

