アウティングとは

アウティングとは、本人の同意なく、その人の性的指向やジェンダーアイデンティティに関する情報を第三者に暴露することを指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。

1.アウティングの意味

アウティングは、本人が公表していない性的指向やジェンダーアイデンティティに関する情報を、本人の同意なく他人に伝える行為をいいます。たとえば、本人が同性愛者であること、 bisexual であること、トランスジェンダーであること、戸籍上の性別と自認する性別が異なることなどを、本人の了解なく職場、学校、家族、友人、取引先などに伝える場合が問題になります。

アウティングは、カミングアウトとは異なります。カミングアウトは、本人が自分の性的指向やジェンダーアイデンティティについて、誰に、どの範囲で、どのように伝えるかを自ら決める行為です。これに対し、アウティングは、本人の意思に反して情報を広げる行為であり、プライバシーや人格権を侵害するおそれがあります。

性的指向やジェンダーアイデンティティに関する情報は、本人の生活、安全、人間関係、就労、学業に深く関わる機微な情報です。本人が一部の人にだけ話していた場合でも、それを別の人に伝えてよいことにはなりません。「悪気はなかった」「心配して共有した」「周囲の理解のためだった」という理由があっても、本人の同意を確認しないまま伝えることは重大な問題になります。

2.制度・法律との関係

アウティングそのものを単独で定義し、刑罰を設ける一般法があるわけではありません。ただし、職場、学校、行政、医療、福祉、地域活動などの場面では、プライバシー保護、ハラスメント防止、個人情報保護、差別防止の問題として扱われます。

職場では、労働施策総合推進法に基づくパワーハラスメント防止措置との関係が重要です。厚生労働省は、性的指向・性自認に関する望まぬ暴露であるアウティングについて、職場のパワーハラスメントの定義の3要素を満たす場合には、パワーハラスメントに該当すると説明しています。

また、性的指向やジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動は、職場のハラスメントとして問題になる場合があります。事業主には、方針の明確化、相談体制の整備、相談後の適切な対応、相談者や協力者への不利益取扱いの禁止、プライバシー保護などが求められます。

個人情報保護法との関係でも、性的指向やジェンダーアイデンティティに関する情報は、本人にとって極めて慎重に扱うべき情報です。相談対応、福利厚生制度の利用、通称名の使用、トイレや更衣室の利用、学校での支援などで情報共有が必要になる場合でも、誰に、何の目的で、どこまで伝えるのかを本人と確認する必要があります。

3.人権上の論点

アウティングの人権上の論点は、本人が自分に関する重要な情報を、いつ、誰に、どのように伝えるかを決める権利に関わる点にあります。性的指向やジェンダーアイデンティティは、単なる噂話の対象ではなく、本人の尊厳、プライバシー、安全、社会生活に直結する情報です。

アウティングによって、本人が職場や学校に居づらくなる、家族関係が悪化する、友人関係が変化する、取引先や顧客との関係に影響する、インターネット上で情報が拡散されるといった被害が生じることがあります。特に、本人がまだ周囲に伝える準備をしていない場合や、家庭や職場に差別的な環境がある場合、アウティングは深刻な孤立や精神的苦痛につながります。

相談を受けた側の対応も重要です。本人から性的指向やジェンダーアイデンティティについて打ち明けられた場合、まず確認すべきことは、誰に共有してよいのか、共有してはいけないのか、支援のためにどの範囲の情報共有が必要なのかです。善意の支援であっても、本人の同意を欠けば、二次被害を生む可能性があります。

アウティングを理解する際には、性的マイノリティに限られた特殊な問題としてではなく、プライバシー、自己決定、ハラスメント防止、個人情報保護に関わる人権課題として捉える必要があります。企業、学校、自治体、医療・福祉機関では、相談を受けた職員や教職員が個人判断で情報を広げないよう、対応手順と守秘のルールを明確にしておくことが重要になります。

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