法務省などは2025年7月26日、熊本市のくまもと県民交流館パレア・パレアホールで、令和7年度「みんなで学ぶ、未来を変える ハンセン病問題人権シンポジウム」を開催した。シンポジウムでは、ハンセン病問題の解説に加え、当事者や関係者による講話、架空の感染症を題材にしたロールプレイワークショップが行われた。アーカイブ配信は2025年8月4日から2026年8月4日までの予定で公開されている。
ハンセン病をめぐっては、かつて国の隔離政策により、患者・元患者本人だけでなく、その家族にも長期にわたる偏見や差別が及んできた。1996年に「らい予防法」は廃止されたが、制度が改められた後も、地域社会、就労、結婚、家族関係などの場面で差別意識が残ってきたことが、この問題の重さである。今回のシンポジウムは、過去の政策被害を単に振り返る場ではなく、感染症や病気に関する誤解が、どのように社会的排除につながるのかを学ぶ機会として位置づけられる。
プログラムでは、太田明さん、竪山勲さん、黄光男さんら当事者・関係者が登壇し、ハンセン病問題の経験や家族への差別について語った。また、合志市立合志楓の森中学校、山鹿市立菊鹿中学校の生徒が参加し、架空の感染症が発生した場合を想定して、学校生活で起こり得る偏見や差別について意見交換した。若い世代が具体的な場面を通じて考える形式は、人権教育を知識の習得だけで終わらせず、自分の行動や判断に引き寄せる点で意味がある。
ハンセン病問題は、医療や福祉の問題にとどまらず、国の制度、教育、地域社会の意識形成が交差する人権課題である。感染症をめぐる不安や誤情報は、現代でも差別や排除を生み得る。学校、自治体、地域団体にとっては、過去の隔離政策の教訓を踏まえ、病気や障害、出自、家族関係を理由とした偏見をどう防ぐかが問われる。今回のシンポジウムは、当事者の声を次世代に伝え、差別を「過去の出来事」としてではなく、現在の社会の課題として捉え直す機会となった。
