愛媛県「とんとこの里」新規受入れ1年停止 障害者虐待と未通報を認定

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この記事のポイント

1.愛媛県が東温市の障害者グループホーム「とんとこの里」に対し、2026年10月1日から1年間、新規利用者の受入れを停止する行政処分を行った。
2.元管理者による身体的・心理的虐待に加え、複数の職員が虐待を目撃しながら市町村へ通報しなかったことも法令違反とされた。
3.生活の場であるグループホームでは、管理者と利用者の力の差が大きくなりやすく、内部で虐待を発見した後に外部の救済機関へ確実につなげる仕組みが不可欠となる。

懲戒処分のイメージ図
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元管理者が利用者を転倒、長時間叱責

愛媛県は、東温市南方の共同生活援助事業所「とんとこの里」を運営する特定非営利活動法人とんとこに対し、障害者総合支援法に基づく指定の一部効力停止処分を行った。2026年10月1日から2027年9月30日までの1年間、新規利用者を受け入れることができない。法人の理事長は高須賀功氏。「とんとこの里」は2022年4月1日に指定を受けた定員7人のグループホームである。

県によると、元管理者は利用者1人の身体を揺さぶる、倒す・押し倒すなどの行為を行ったほか、長時間にわたり繰り返し叱責した。県は前者を身体的虐待、後者を心理的虐待と認定した。利用者の人格を尊重し、虐待防止のために必要な措置を講じるべき管理者自身が虐待を行っていたことから、指定事業者としての運営基準にも違反したとしている。

グループホームは「サービス提供場所」であると同時に生活の場

共同生活援助は、障害のある人が地域で暮らすための住まいでもある。利用者にとって職員は、食事や生活上の支援、日々の相談などを担う存在であり、通常の店舗でサービスを受ける関係とは異なる。日常生活を支える側が加害者になった場合、被害を受けた本人がその場を離れたり、自ら外部へ訴えたりすることが難しくなる可能性がある。

このため、障害者虐待防止制度では「本人が訴えられるか」だけに救済を委ねていない。障害者福祉施設従事者等による虐待を受けたと思われる障害者を発見した者には、市町村への速やかな通報義務がある。今回、複数の職員が虐待を目撃していたにもかかわらず市町村へ通報していなかったことも、障害者虐待防止法違反として認定された。内部で虐待が知られていたのに法定の外部通報につながらなかった点は、個人の加害行為だけでは説明できない組織上の問題である。

「管理者に報告した」で終わらせない制度

虐待者が管理職や施設責任者である場合、同じ組織の中だけで対応を完結させようとすれば、部下が異議を唱えにくかったり、問題が小さく扱われたりする危険がある。障害者虐待防止法が市町村への通報を定めているのは、施設内部の上下関係から切り離した救済経路を確保するためでもある。職員研修の実施回数だけでなく、誰が虐待した場合でも職員が外部へ通報できるか、通報した職員が不利益を受けないか、利用者本人が分かりやすい方法で相談できるかまでが、虐待防止体制の実質を左右する。

厚生労働省によると、2024年度に障害者福祉施設従事者等による虐待について全国で寄せられた相談・通報は5,870件で、虐待と判断された事例は1,267件、被虐待者は2,010人だった。通報件数の多寡だけから虐待の増減を判断することはできず、これまで隠れていた被害が制度によって把握されるようになった可能性も含めて見る必要がある。

処分後も既存利用者は生活を続ける

今回の行政処分は事業所の指定取消しではなく、新規利用者の受入れ停止である。すでに「とんとこの里」で暮らしている利用者の生活は続く。このため処分の実効性を検証するには、新規受入れを止めたことだけでなく、管理体制がどう改められたか、既存利用者が安心して暮らせているか、本人や家族が施設を経由せず相談できる経路が確保されたかまで確認する必要がある。

愛媛県が認定したのは、元管理者による虐待と、それを目撃した職員の未通報という二つの問題だった。「とんとこの里」の再発防止では、加害者個人への対応だけでなく、利用者が声を上げにくい場合でも外部から被害を把握できる組織へ変わったかが処分後の中心的な確認事項となる。

出典

愛媛県「指定障害福祉サービス事業者に対する行政処分について」
URL: https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/191632.pdf

厚生労働省「令和6年度 障害者虐待対応状況調査」
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67304.html

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人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

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