1.2026年10月1日、自営業者やフリーランスなど国民年金第1号被保険者を対象とする「育児期間免除制度」が始まった。
2.1歳未満の子を養育する実父母・養父母は所得や休業の有無を問わず対象となり、免除期間も将来の基礎年金額には納付済みとして反映される。
3.育児休業制度を利用しにくい働き方にも支援を広げる一方、利用には届出が必要であり、制度を知らない家庭をどう減らすかが実施段階の課題となる。

10月1日から新制度、父母とも対象
2026年10月1日、国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料免除制度が施行された。対象は自営業者、フリーランス、農業者、学生、無職の人などのうち、1歳未満の子と同一住所で暮らす実父母・養父母。所得要件は設けられていない。実父や養父母などは、原則として子を養育することになった月から1歳の誕生日の前月まで最大12カ月間、保険料が免除される。産前産後免除を受ける実母は、その期間に続く9カ月間が育児免除の対象となる。制度は「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」に盛り込まれ、10月1日施行分として実施された。
年21万円余の負担軽減、将来の年金額は減らない
令和8年度の国民年金保険料は月額1万7,920円。最大12カ月の免除を受けた場合、単純計算では21万5,040円分の納付負担がなくなる。通常の所得減少を理由とする保険料免除制度と異なるのは、育児免除期間が保険料を納付した期間として扱われ、老齢基礎年金の計算でも納付済みとして反映される点だ。保険料を払わない代わりに将来の年金が減る仕組みではない。2026年10月より前に生まれた子でも、施行時点で1歳未満で条件を満たせば、10月以降の該当期間について免除を受けられる。
「育休を取る」こと自体が難しい働き方
今回の制度が対象とする問題は、単なる保険料負担ではない。会社員など厚生年金加入者には、育児休業等を取得した期間について社会保険料を免除する仕組みがある。これに対し、自営業者やフリーランスでは、仕事と生活の境界が異なり、「育児のため一定期間休業した」と一律に判定することが難しい。休業しても、雇用保険の育児休業給付を受けられない人もいる。厚生労働省の制度検討では、こうした第1号被保険者の就業・所得の多様性を踏まえ、休業要件と所得要件の双方を設けない制度設計が採用された。働き方によって育児期の社会保障に大きな差が生じてきた問題への対応といえる。
「父親も免除」が示す制度の変化
実父も対象となる点も制度上の特徴だ。父母がともに国民年金第1号被保険者で、それぞれ要件を満たせば、父母とも制度の対象になり得る。育児を母親だけの役割として扱わず、子を養育する父母を支援対象とする設計になっている。養父母に加え、特別養子縁組の監護期間にある子や一定の里親委託についても対象となる。家族の形や働き方が異なっても、子の養育という事実を基礎に支援する仕組みが採られた。
届出しなければ利用できない
制度が始まっても、自動的にすべての対象者の保険料が免除されるわけではない。日本年金機構への届出が必要で、マイナポータルからの電子申請にも対応する。ここには制度利用上の課題が残る。会社員のように勤務先が社会保険手続きを担う仕組みとは異なり、自営業者やフリーランスは本人が制度を知り、対象かどうか確認して手続きする必要があるからだ。厚生労働省も自治体、里親支援センター、養子縁組あっせん機関などに制度周知への協力を求めている。10月1日に始まった育児期間免除制度は、保険料免除そのものとともに、必要な家庭まで情報と手続きが届くかが制度の実効性を左右する。
厚生労働省「育児期間の国民年金保険料免除制度」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000143356_00038.html
日本年金機構「国民年金保険料の育児免除制度」
URL:https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/ikujimenjo.html
日本年金機構「国民年金保険料」
URL:https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
こども家庭庁「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
URL:https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ba94b64b-731f-4f48-97ba-b54a76b0aeb6/9f6e535d/20240621_councils_shienkin-daijinkonwakai_06.pdf
厚生労働省「国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度の周知について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9818&dataType=1&pageNo=1

