1.千葉県労働委員会が10月7日、国鉄千葉動力車労働組合と組合員17人による5件の不当労働行為救済申立てについて命令を出した。
2.JR千葉鉄道サービスが組合員17人を再雇用しなかったことについて、組合所属を理由とする不利益取扱いとは認めなかった。
3.不当労働行為が認定されなかったことと、再雇用制度そのものの妥当性は別問題であり、労働組合法は労働者が集団で声を上げる権利を保障する制度でもある。

再雇用されなかった組合員17人
千葉県労働委員会は10月7日、国鉄千葉動力車労働組合と組合員17人が、JR千葉鉄道サービス株式会社(CTS)と東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)を相手に申し立てた5件の不当労働行為事件について命令書を交付した。申立ては2021年11月5日から2023年5月30日までに行われ、県労委が併合して審査した。争点の一つは、JR東日本を退職後、再雇用制度を利用してCTSへ出向していた組合員17人について、再雇用期間終了後にCTSが直接雇用しなかったことが、労働組合への所属を理由とする不利益取扱いに当たるかだった。県労委はこれを認めず、救済申立てを退けた。
県労委は、CTSが過去に動労千葉の組合員を採用した実績があったことや、2021年度以降は組合員かどうかを問わず、JR東日本での再雇用期間を終えた人を採用していなかったことなどを判断材料とした。JR東日本についても、CTSの全株式を保有しているだけでは今回の採用について労働条件を具体的、直接的に支配していたとは認められず、この問題について労働組合法上の「使用者」には当たらないと判断した。
不当労働行為制度が守る「集団で声を上げる権利」
労働組合法7条が、組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱いや、正当な理由のない団体交渉拒否などを禁止しているのは、個々の労働者の待遇だけを守るためではない。労働者が使用者との力関係の中で単独では主張しにくい要求を、労働組合を通じて集団で交渉できるようにするためでもある。組合加入や組合活動によって雇用上の不利益を受けるとの認識が職場に広がれば、他の労働者まで加入や発言を控える可能性があり、憲法28条が保障する団結権、団体交渉権の実質が弱まる。このため労働委員会には、裁判とは別に不当労働行為を迅速に救済する仕組みが設けられている。
ただし、今回の命令から「17人を直接雇用しないこと自体に何の問題もなかった」と広く結論付けることはできない。労働委員会が判断したのは、CTSの行為が労働組合への所属などを理由とする不当労働行為だったかという限定された法的問題である。高年齢者の雇用継続や再雇用制度の妥当性、雇用機会の公平性を包括的に審査したものではない。人権上は、「救済申立てが棄却されたこと」と「雇用制度全体が公平だったこと」を混同しない読み方が必要になる。
1年の申立期限も救済への壁に
団体交渉をめぐっては、2021年4月28日、6月17日、2022年3月8日、3月28日、5月27日の交渉が対象となった。このうち3件は2024年7月9日に追加して申し立てられたため、最終の団体交渉から労働組合法が定める1年を経過しているとして却下された。残る2件では、CTS側の説明に一部誤りがあったものの、意図的な虚偽説明とは認められず、その後に訂正と謝罪を行ったことなどから不誠実団交には当たらないとした。
救済制度が存在していても、申立期間を過ぎれば実体判断に進めない場合がある。労使紛争は交渉が何度も続き、当事者が解決を模索する間に時間が経過することもあるため、労働者側にとっては記録の保存と期限管理も権利救済の実効性を左右する。千葉県労委の今回の命令は、組合員への不利益取扱いが認定されなかった事例であると同時に、団体交渉権を制度上保障することと、その救済手続を実際に利用できることが別の課題であることも示した。
千葉県「不当労働行為事件の命令概要について」
URL: https://www.pref.chiba.lg.jp/chiroui/press/2026/3-3-meireigaiyou.html
中央労働委員会「不当労働行為救済制度とは」
URL: https://www.mhlw.go.jp/churoi/shinsa/futou/futou01.html

