川崎市、認知症月間に本庁舎を7日間点灯 基本法施行後の啓発を検証

この記事のポイント

1.川崎市は9月15日から21日まで、市役所本庁舎を認知症啓発のシンボルカラーであるオレンジ色にライトアップする。
2.2024年施行の認知症基本法は、9月21日を「認知症の日」、9月を「認知症月間」と法律上定め、国と地方公共団体による啓発事業の実施を規定している。
3.横浜市では認知症本人が出演して生活や思いを伝える動画も展開しており、啓発を本人発信や相談支援へどうつなぐかが自治体施策を比較する材料となる。

川崎市がオレンジライトアップなど認知症の普及啓発

川崎市は2026年9月15日から21日までの7日間、市役所本庁舎を認知症のシンボルカラーであるオレンジ色にライトアップする。9月21日の「認知症の日」と9月の「認知症月間」に合わせた普及啓発事業で、市はライトアップなどを通じて認知症への理解を広げるとしている。従来の啓発週間や民間キャンペーンとは異なり、現在の「認知症の日」と「認知症月間」には法律上の根拠がある。

2024年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、第9条で9月21日を認知症の日、9月1日から30日までを認知症月間と定めた。国と地方公共団体には、その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めることも規定している。同法が目標とするのは認知症の有無で人を分ける社会ではなく、認知症の人を含む人々が相互に人格と個性を尊重して共生する社会であり、啓発も病気の知識を伝えるだけでは完結しない。

厚生労働省の推計では、2022年の65歳以上の認知症高齢者は443万2千人で、高齢者に占める割合は12.3%だった。MCI(軽度認知障害)は558万5千人、15.5%と推計される。2040年には認知症が584万2千人、MCIが612万8千人に増える見込みである。この数字は、啓発の対象が一部の家族や介護職だけではなく、地域生活、交通、買い物、医療、行政手続など幅広い社会制度に及ぶことを示している。

近隣の横浜市も2026年9月、公共施設などのオレンジライトアップを実施するが、同時に認知症の本人が出演する動画を活用している。動画では、認知症の本人が趣味や日常を楽しむ姿や自らの思いを伝える。行政が認知症を説明する方式と、本人が発信主体になる方式では、受け手に届く情報が異なる。認知症基本法の下では、本人を施策の対象として扱うだけでなく、本人の声を政策や地域づくりの起点とすることが国の手引きでも示されている。

ライトアップは多くの人が認知症について知る入口になり得るが、点灯件数自体を偏見の減少や支援充実の成果とみなすことはできない。啓発を見た本人や家族が相談先を把握できたか、地域包括支援センターなどの支援へ接続したか、本人の意見を次の施策に取り込んだかという段階まで確認する必要がある。川崎市が9月21日のライトアップを、年間を通じた相談・地域支援や本人参加へどうつなぐかが認知症基本法施行後の施策を測る材料となる。

出典

川崎市「9月21日は認知症の日 オレンジライトアップなど認知症の普及啓発を実施します」
URL: https://www.city.kawasaki.jp/templates/prs/350/0000189822.html

厚生労働省「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」
URL: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab9328&dataType=0&pageNo=1

厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001617632.pdf

横浜市「9月21日は『認知症の日』 『認知症月間』に合わせて、オレンジ色のライトアップ・動画放映を行います」
URL: https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/kenko/2026/0901ninchisyo.html

人権ニュース編集部

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