1.神奈川県がDV・ストーカー被害者の安全確保を目的に加害者研究会を設置し、9月2日に初会合を開く。
2.医療、心理、司法などの専門家10人が、加害者の特性や医療・教育プログラムへの接続方法を検討する。
3.国もDV加害者プログラムを「被害者支援の一環」として実施しており、加害者への働き掛けと被害者の安全確保の順序が制度上の核心となる。

神奈川県は9月2日、県庁新庁舎で「第1回神奈川県DV・ストーカー被害者支援に向けた加害者研究会」を開く。研究会は8月1日付で設置され、DV・ストーカー加害者の特徴や背景、対応上の課題、医療や教育プログラムへつなぐ方法を研究する。目的として最初に掲げているのは、加害者の更生そのものではなく「DV・ストーカー被害者の安全を守ること」だ。
構成員は10人。医療法人社団祐和会大石クリニック院長の大石雅之氏、立教大学現代心理学部准教授の大江由香氏、一般社団法人PROVE共同代表の国兼淳子氏をはじめ、精神医療、心理学、法律、被害者支援など異なる領域の専門家が参加する。DVとストーカーは適用される法律や行為態様が同一ではないため、一括して「加害者問題」と捉えるだけではなく、それぞれのリスクや被害の特徴を踏まえた検討が必要になる。
加害者への働き掛けは、国でも制度化が進められてきた。内閣府は2020~2022年度、東京都、広島県、熊本県、長崎県、大阪市の5自治体で配偶者暴力加害者プログラムを試行し、2023年5月に地方自治体向けの「実施のための留意事項」を作成した。2024年度からは交付金による支援を拡大し、2024年度は5自治体、2025年度は7自治体の事業を支援。神奈川県も取組事例の一つとして掲載されている。
被害規模から見ても、加害行為への対応は相談支援とは別に検討する余地がある。内閣府の「令和8年版男女共同参画白書」によると、2025年に終局した配偶者暴力等の保護命令事件1,411件のうち1,059件で保護命令が発令された。同年のストーカー事案の相談等件数は2万2,881件で、前年より増加した。ストーカーについて国は、禁止命令を受けた加害者へのカウンセリングの働き掛けや、再発・報復のおそれを把握するリスク評価も進めている。
ここで注意したいのは、加害者への医療、心理、教育的支援が被害者支援と競合する構図にしないことである。内閣府も加害者プログラムを、暴力の再発防止を通じた「被害者支援」の施策として整理している。神奈川県研究会でも、医療や教育プログラムへの接続方法だけでなく、被害者の安全確認、関係機関間の情報共有、加害行為の再発リスクをどう把握するかが実施段階の検証事項となる。第1回研究会は午後2時から4時まで開かれ、神奈川県共生推進本部室が事務局を担う。
神奈川県「第1回神奈川県DV・ストーカー被害者支援に向けた加害者研究会の開催について」
URL:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m8u/prs/r5374420.html
内閣府男女共同参画局「加害者プログラム」
URL:https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/kagaisya/index.html
内閣府「令和8年版男女共同参画白書 第5章第1節 配偶者暴力」
URL:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r08/zentai/html/honpen/b1_s05_01.html

