1.2026年10月1日から、カスタマーハラスメント防止措置が事業主の義務となる。
2.法律上のカスハラは「顧客等の言動」「社会通念上の許容範囲を超える」「就業環境を害する」の3要件をすべて満たす必要がある。
3.企業には従業員を守る仕組みと同時に、正当な苦情や合理的配慮の申出まで排除しない判断基準が必要となる。

厚生労働省は2026年8月20日、Webマガジンの「ハラスメント対策の強化」第2回として、10月1日に施行されるカスタマーハラスメント対策の新制度を解説した。2025年6月の労働施策総合推進法改正により、カスハラ防止のために必要な雇用管理上の措置を講じることが、10月から事業主の義務となる。
厚労省は、法律上のカスタマーハラスメントについて三つの要件を示す。第一に顧客、取引先、施設利用者など「顧客等」の言動であること。第二に業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えること。第三に、その言動によって労働者の就業環境が害されることである。三つすべてを満たす必要があり、電話やSNS上の言動、BtoBの取引先担当者からの行為も対象となり得る。
背景には、企業現場での相談増加がある。厚労省の2023年度調査では、約8,000企業・団体の27.9%が、過去3年間に「顧客等からの著しい迷惑行為」について労働者から相談を受けたと回答した。前回調査より8.4ポイント増えている。具体的な行為は継続的・執拗な言動72.1%、威圧的な言動52.2%、精神的攻撃44.7%だった。
制度変更の核心は、従業員個人に「接客だから我慢する」「自分でうまく対応する」と負担させないことである。相談窓口、社内の対応手順、管理職へのエスカレーション、必要に応じた警察との連携などを組織として整える必要がある。
ただし、カスハラ対策の強化が、利用者の正当な苦情を封じる制度になってはならない。特に医療、福祉、交通、行政などでは、障害者による合理的配慮の申出や、サービス上の問題を訴える行為を安易に「迷惑客」と扱えば別の人権問題を生む。10月1日以降は、従業員保護の強化と同時に、「何をカスハラと判断し、何を正当な申出として受け止めるか」の社内基準を具体化することが企業・自治体双方の実務課題となる。
厚生労働省「従業員を守るために―カスタマーハラスメント対策の新ルール」
URL: 厚生労働省Webマガジン

