日本青年会議所、DE&I企業1779社で日本記録 所属数と実効性を区別

この記事のポイント

1.日本青年会議所がDE&Iに取り組む企業1779社を擁する団体として日本記録認定協会の認定を受けた
2.認定が示すのは条件を満たした「所属企業数」であり、各社の格差縮小や人権侵害リスクの低さを認定したものではない
3.国連指導原則や日本政府の人権ガイドラインでは、方針策定から人権デュー・ディリジェンス、救済まで企業の取組範囲はさらに広い

日本青年会議所、『DE&Iに取り組む企業が最も多く所属する団体』として日本一に認定

公益社団法人日本青年会議所は2026年8月、DE&Iに取り組んでいる企業が最も多く所属する団体として、日本記録認定協会から日本記録の認定を受けた。対象企業は2026年7月時点で1779社。全国の青年会議所に所属する会員企業について、株式会社JobRainbowが監修する「ダイバーシティスコア」などを用いて取組状況を集計し、司法書士と弁護士による照合・検証を経て認定されたとしている。同スコアではインクルージョン、公平性、帰属意識、心理的安全性などを評価項目として扱う。

数字を読む上で重要なのは、「1779社」が何を証明しているかである。日本記録認定協会の認定項目は「DE&I推進に取り組む企業が最も多く所属する団体」であり、国や法律に基づく企業認定制度ではない。また、各社の男女間賃金格差、管理職構成、障害者への合理的配慮、ハラスメント発生状況、性的マイノリティの従業員の定着率などについて1779社を横断的に評価し、「成果が国内最高」と認定したものでもない。所属企業の広がりを示す指標と、各企業で実際に生じた変化を示すアウトカム指標は分けて扱う必要がある。

企業と人権に関する国際的な基準では、2011年に国連人権理事会が支持した「ビジネスと人権に関する指導原則」が基礎となっている。日本政府はこれを踏まえ、2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定した。経済産業省は企業の主要な取組として、人権方針の策定、人権デュー・ディリジェンス、救済を挙げている。人権デュー・ディリジェンスでは、自社内だけでなく、サプライヤーなど事業活動と関係する人権への負の影響を把握し、予防・軽減、追跡、説明へつなげる。社内の多様性や心理的安全性を扱うDE&Iとは重なる領域がある一方、対象範囲は同一ではない。

法制度との関係でも、自主的なDE&I指標と差別禁止義務は別に考える必要がある。例えば英国ではEquality Act 2010が、年齢、障害、人種、宗教・信条、性、性的指向、gender reassignmentなどの保護特性を基礎として、雇用やサービス等における差別を規律する。企業が独自のDE&Iスコアを導入しているかにかかわらず、法令上の義務は適用される。日本青年会議所の1779社という数字は取組を広げるネットワークの規模を示す材料になるが、次の段階では各社の人権方針、苦情処理、格差データ、取引先を含む人権リスクへの対応が実際に変化したかが焦点となる。日本青年会議所が今後、所属数だけでなく成果を継続的に測定・公表するかによって、日本記録認定の実質的な内容をより具体的に検証できる。

出典

公益社団法人日本青年会議所「DE&Iに取り組んでいる企業が最も多く所属している団体として日本一に認定」
URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000158.000126503.html

日本記録認定協会「DE&I推進に取り組む企業が最も多く所属する団体」
URL: https://japaneserecords.org/japanese-records/40224/

経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
URL: https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003.html

経済産業省「ビジネスと人権」
URL: https://www.meti.go.jp/policy/economy/business-jinken/

経済産業省「人権尊重のためのガイドラインと人権デュー・ディリジェンス」
URL: https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2024/2024honbun/i2150000.html

英国政府「Equality Act 2010 Code of Practice」
URL: https://www.gov.uk/government/publications/equality-act-2010-code-of-practice-for-services-public-functions-and-associations-2026/equality-act-2010-draft-code-of-practice-for-services-public-functions-and-associations-2026

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人権ニュース編集部

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