1.栃木県が8月31日、カスタマーハラスメント防止条例施行後初となる推進会議を開く
2.県条例は就業者保護だけでなく、顧客らの正当な権利を侵害しないことも明記している
3.10月1日には国法による事業主の防止措置義務が始まり、県条例と国制度の整理が企業実務に直結する

栃木県は8月31日、県庁本館で「第1回栃木県カスタマーハラスメント防止対策推進会議」を開く。2026年4月1日に施行した「栃木県カスタマーハラスメント防止条例」に基づく会議で、県の防止対策事業の進捗、全国の取組、国の制度などを議題とする。会議は公開され、傍聴は先着10人。条例を制定して終わるのではなく、施行後の対策を検討する仕組みが実際に動き始める。
県条例は、顧客などの言動のうち、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、就業環境を害するものをカスタマーハラスメントと定義する。県、顧客等、就業者、事業者それぞれの責務を定め、事業者には相談に応じる体制など必要な措置を講じるよう定めた。ただし、条例は防止対策に際して「顧客等の正当な権利を侵害することがないよう十分に留意」することも基本理念に含める。商品やサービスに問題があり、利用者が説明や是正を申し入れる行為と、従業員の就業環境を害する言動を同一に扱わない制度設計である。
企業にとっては、10月1日にもう一つの転換点を迎える。2025年6月公布の改正労働施策総合推進法により、事業主によるカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が義務化される。厚生労働省は2026年2月に指針を告示し、相談体制の整備、事実関係の確認、被害を受けた労働者への配慮、再発防止などを事業主側の対応として整理した。栃木県条例が県、顧客、就業者、事業者を含む地域全体のルールを示すのに対し、国法は雇用主が職場で講じる措置を法的義務として具体化するという違いがある。
この二つを区別することは、現場での過剰反応を防ぐためにも欠かせない。カスハラ防止を理由として正当な苦情まで拒めば、消費者や施設利用者の権利との別の問題が生じる。逆に「客の意見だから」と従業員への威圧や長時間拘束を放置すれば、防止措置を設けた制度の趣旨に反する。企業が必要とするのは「クレームを受けるか、受けないか」という二択ではなく、要求内容と手段・態様を分けて判断する基準である。
8月31日の推進会議は、国の措置義務化まで約1か月という時期に開かれる。議題には国と全国の状況も明記されており、栃木県が4月施行の県条例と10月施行の国制度を事業者向けにどう整理していくかを確認できる最初の機会となる。県の啓発、相談、事業者支援が国の指針と重複する部分、県独自に補完する部分を明確にできるかが、条例施行後の運用を理解する上で重要な材料となる。
栃木県「第1回栃木県カスタマーハラスメント防止対策推進会議の開催について」
URL:https://www.pref.tochigi.lg.jp/f06/r8kasuharasuishinkaigi.html
栃木県「カスタマーハラスメント防止対策」
URL:https://www.pref.tochigi.lg.jp/f06/work/fukushi/customerharassment.html
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/
カスタマーハラスメント
URL:https://jinken-news.com/glossary/customer-harassment/

