受刑者選挙権、10月14日最高裁大法廷 一律停止の合憲性

この記事のポイント

1.最高裁大法廷は2026年10月14日、公職選挙法による受刑者の選挙権停止を審理する。
2.2025年末の在所受刑者は3万4,374人だが、未決拘禁者や執行猶予中の人は扱いが異なる。
3.欧州人権裁判所は、全受刑者への一律剥奪と、犯罪・刑期に応じた制限を区別している。

受刑者の選挙権

最高裁判所は2026年10月14日、受刑者選挙権確認等事件(令和6年(行ツ)第193号、同年(行ヒ)第230号)の弁論を大法廷で開く。公職選挙法第11条第1項は、拘禁刑以上の刑に処せられ、刑の執行を終えるまでの者について、選挙権と被選挙権を認めていない。上告人は服役中だった2021年10月31日の衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査と、2022年7月10日の参議院議員通常選挙で投票できず、同条の違憲性などを争っている。東京地方裁判所は2023年7月20日、請求を退けた。

法文上の基準は、刑事施設に収容されているかどうかではなく、確定した刑の執行を終えたかどうかに置かれる。未決拘禁者には同項が適用されず、刑事施設内の不在者投票が認められている。一般犯罪で執行猶予中の者も対象から除かれるが、選挙犯罪や公職在任中の収賄罪などには別の欠格規定がある。仮釈放中も刑の執行は終了していないため、施設の外で生活していても選挙権は回復しない。罪名、刑期、選挙との関係を個別に問わず、実刑の執行中であれば原則として投票できない点が今回の審理対象となる。

法務省の2025年矯正統計によると、同年末の在所受刑者は3万4,374人で、2024年末の3万3,745人から629人増えた。外国籍者や選挙権年齢に達していない者も含むため、選挙権停止の対象者数そのものではないが、制度が及ぶ可能性のある規模をみる基礎数値となる。2025年6月1日には懲役と禁錮を一本化した拘禁刑が始まり、受刑者ごとの特性に応じて作業と指導を組み合わせ、改善更生と社会復帰を図る処遇へ改められた。処遇を個別化する制度と、選挙権を一律に停止する制度との整合も検証事項に入る。

東京地裁判決は、選挙権が憲法上保障された個人的権利であることを認めつつ、実刑判決を受けた者は法秩序を著しく害したとして、適格な選挙人団を構成し、公明・適正な選挙を確保する目的には合理性があると判断した。個々の受刑者について選挙人としての適格性を判断するのは困難であり、実刑という一律の基準にも合理性があるとした。これに対し、犯罪が選挙制度と無関係でも政治参加を失わせることや、受刑期間の長短を区別しないことが必要な制限といえるかは、独立した論点として残る。

欧州人権裁判所は2005年のハースト対英国判決で、罪の性質や刑期を問わない一般的、自動的、無差別な投票権剥奪を欧州人権条約第1議定書第3条違反とした。他方、2012年のスコッポラ対イタリア判決では、国家・司法制度に対する一定の犯罪や3年以上の刑を対象とする制度について、一般的な一律剥奪ではないとして違反を認めなかった。比較対象が示すのは、受刑者の選挙権を一切制限できないという結論ではなく、犯罪との関連性や刑の重さに応じた比例性である。最高裁大法廷は10月14日の弁論で、国会の立法裁量と受刑者の参政権をどの基準で線引きするかを審理する。

出典

最高裁判所「最高裁判所開廷期日情報」
URL:https://www.courts.go.jp/saikosai/kengaku/saikousai_kijitsu/index.html

東京地方裁判所「令和4年(行ウ)第369号 選挙権確認等請求事件判決」
URL:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-92509.pdf

e-Gov法令検索「公職選挙法」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000100

e-Stat「矯正統計調査 2025年・年末在所受刑者の刑名・刑期」
URL:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?layout=datalist&lid=000001486966&page=1

法務省「令和7年版犯罪白書」
URL:https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_2_4_3_1.html

European Court of Human Rights「Prisoners’ right to vote」
URL:https://www.echr.coe.int/documents/d/echr/fs_prisoners_vote_eng

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