1.ヒューマンライツ・ナウとSpringが、2023年改正刑法の性犯罪規定について共同アンケートを開始した。
2.法律実務家には捜査・不起訴・裁判の実態を、メディア関係者には取材や報道を通じて把握した運用状況を尋ねる。
3.調査結果を、刑事司法の実務改善と、法律が定める施行後5年の制度検討に向けた提言へ活用する。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウと一般社団法人Springは2026年7月14日、2023年改正刑法の性犯罪規定が刑事司法と報道の現場でどう運用されているかを調べる共同アンケートを始めた。同日、衆議院第一議員会館で記者会見を開き、法律実務家と、性暴力・性犯罪を取材してきたメディア関係者に回答を呼びかけた。調査期間は7月14日からで、終了日は定めていない。
メディア関係者向け調査は、2023年7月の改正規定施行後に扱った事件・事案ごとの取材経験を尋ねる。改正前後の報道方針、警察・検察・裁判所の対応、不同意性交等罪の運用、「同意があったと誤信した」との主張が争点になった事案、取材や刑事手続に伴う被害者の二次被害などが対象となる。ステルシング、独身偽装、公訴時効延長の効果も調査項目に含めた。
ヒューマンライツ・ナウが担当する法律実務家向け調査は、捜査段階、不起訴事案、起訴後の裁判という3段階に分けて実態を確認する。被害届が受理されなかった事例、証拠収集の状況、不起訴や無罪となった理由、「不同意」や「同意誤信」の判断、被害者保護制度の利用、二次被害の有無を尋ねる。改正法の趣旨に沿って処理された事例も集め、問題事例だけでなく、適切な実務の条件を抽出する構成とした。
2023年の改正では、強制性交等罪と強制わいせつ罪を不同意性交等罪、不同意わいせつ罪へ改め、「同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態」を犯罪成立の基礎に据えた。刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律の附則20条は、施行後5年を経過した段階で政府が運用状況を踏まえて制度を検討し、より実証的な検討のため、性的被害を申告する困難さなどについて必要な調査を行うと定めている。
両団体は会見で、被害届の不受理、不起訴判断、裁判での二次被害などにより、改正の趣旨が被害者救済へ十分に結び付いていない事例があるとの認識を示した。ただし、今回のアンケートは回答者の経験に基づく任意調査であり、全国の運用実態をそのまま示す統計ではない。結果を公表する際には、回答件数、事案の重複、地域や職種の偏り、収集方法を明示する必要がある。
性犯罪規定の実効性は、条文の変更だけでなく、被害申告の受理、証拠収集、不起訴理由の説明、公判での被害者保護が連続して機能するかによって左右される。ヒューマンライツ・ナウとSpringは、調査結果を実務運用の改善と施行後5年の制度検討に向けた提言へつなげる方針で、法律実務家とメディア関係者からの回答を引き続き受け付ける。
ヒューマンライツ・ナウ「【記者会見報告】『改正刑法(性犯罪規定)施行後の運用実態に関するアンケート調査』共同記者会見」
URL:https://hrn.or.jp/news/29259/
