1.IHIグループは、グループ従業員約2万人を対象にDE&Iをテーマとした対話型eラーニングを実施した。
2.NPO法人クロスフィールズと共同開発し、360度映像、目を閉じた自己紹介、従業員インタビューを組み込んだ。
3.受講後アンケートでは、1万5,000人超の回答者の約6割が「DE&Iを推進したいと思うようになった」と答えた。

IHIグループは2026年3月31日、グループ従業員約2万人を対象に、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)をテーマとした対話型eラーニングを2024年度末から2025年度にかけて実施したと公表した。制度や用語の理解にとどめず、従業員が自分の職場での行動に引き寄せて考えることを目的にした研修である。
IHIは2024年度を「DE&I元年」とし、研修、情報発信、対話の場づくりを進めてきた。公表資料では、言葉の意味や必要性を理解するだけでは、現場での実践や行動変容につながりにくいという課題認識が示されている。この課題に対応するため、企業と社会課題の現場をつなぐ特定非営利活動法人クロスフィールズと共同で、対話型eラーニングプログラムを開発した。
プログラムは約1時間で、「多様な個性について考えること」と「個性を大切にすることが職場にもたらす価値について考えること」を狙いに設計された。一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティが提供する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の冒頭を疑似体験できる360度映像を視聴し、目を閉じて自己紹介を行う。視覚以外の感覚やコミュニケーションを使うことで、普段の職場では意識しにくい「違い」を扱う構成である。
研修には、従業員へのインタビュー動画も組み込まれた。DE&Iを抽象的な経営スローガンとして扱うのではなく、所属、職位、経験の異なる従業員が職場で感じる課題や捉え方を共有する内容としている。クロスフィールズの記事によると、プログラムは55分間で、グループ対話17分、360度映像の視聴2分程度を含む。制作過程では、一般従業員をアンバサダーとして募集し、約40名が試作版にフィードバックした。
受講後アンケートでは、1万5,000人超の回答者の約6割が「DE&Iを推進したいと思うようになった」と回答した。IHIの公表資料には、「自分もダイバーシティの一員であると気づいた」「アンコンシャス・バイアスを意識し、コントロールすることの重要性を感じた」といった受講者の声が紹介されている。企業研修として見れば、知識の付与よりも、職場の会話と行動の変化を測ろうとした点が特徴となる。
人権上の論点は、DE&Iを「配慮を受ける一部の人の問題」として切り出さず、全従業員の働き方、発言機会、心理的安全性、評価の公正さと接続している点にある。障害、性別、国籍、年齢、性的指向・性自認、家庭責任などの差異は、職場での配置、育成、昇進、発言のしやすさに影響する。企業が研修を行う場合、差別禁止の知識を伝えるだけでは足りず、上司と部下、同僚間のやり取りを変える仕組みに落とし込めるかが実務上の分岐点になる。
IHIグループは、対話を通じた相互理解を促し、従業員が自分らしさを生かしながら新たな価値創出に挑戦できる組織文化づくりを進めるとしている。次の課題は、1時間のeラーニングで得た気づきを、採用、配置、評価、チーム運営、相談対応などの人事施策にどう接続するかにある。IHI人事部DE&Iグループとクロスフィールズが共同開発した今回のプログラムは、大規模製造業におけるDE&I研修の設計例として読める。

