職場の臭い、53.6%が集中力低下 65.3%は我慢

この記事のポイント

1.職場で他人の臭いを不快に感じた人の53.6%が「集中力が削がれた」と回答した。
2.不快な臭いがあっても65.3%は我慢し、相手を傷つけることや関係悪化を懸念している。
3.臭いの問題を個人への非難で処理せず、換気や相談経路を含む職場環境の課題として扱う必要がある。

職場の臭い(におい)に関する実態調査

一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会は2026年6月19日、「職場の臭い(におい)に関する実態調査」の結果を公表した。他人の臭いによって「集中力が削がれた」と答えた人は53.6%に達し、「接触を避けた」は43.1%、「体調不良を感じた」は36.5%だった。調査は6月1日から3日まで、全国の22歳から59歳を対象にオンラインで行い、550人から有効回答を得た。

不快に感じる臭いとして最も多かったのは「体臭」の40.4%で、「口臭」15.6%、「タバコ」14.9%が続いた。回答者自身も無関係ではなく、49.3%が自分の臭いに不安を感じ、63.1%は何らかの対策をしていた。臭いは本人が気付きにくく、周囲も直接伝えにくい。業務上の支障が生じても、問題が表に出ないまま、席を離れる、会話を減らす、接触を避けるといった行動につながる実態が数字に表れている。

不快な臭いを感じた際に「我慢する」と答えた人は65.3%だった。理由は「相手を傷つけたくない」が50.5%で最多となり、「言い方が分からない」37.5%、「関係性が悪くなるのが怖い」34.4%と続いた。個人間で指摘させる仕組みでは、伝える側に心理的負担が集中し、受けた側も人格を否定されたと感じやすい。とりわけ上司が人前で臭いを取り上げたり、同僚が陰口や仲間外れに結び付けたりすれば、問題は職場環境の改善ではなく、尊厳を傷つける言動へ変わる。

「スメルハラスメント」や「スメハラ」は一般に使われる表現だが、臭いがあること自体を直ちに法令上のハラスメントと判断する制度ではない。厚生労働省は職場のパワーハラスメントについて、優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、就業環境が害されることの3要素をすべて満たすものと説明している。臭いへの対応でも、業務上の必要性や伝え方、公開の場で指摘したか、侮辱や排除を伴ったかなどを個別に確認する必要がある。

職場で問題になるのは体臭や口臭だけではない。香水、柔軟仕上げ剤、消臭剤など、本人が快適さや清潔さのために使用した製品が、別の人には負担となる場合もある。消費者庁は2026年2月、香り付き製品によって頭痛や吐き気などを訴える相談例を紹介し、使用量の目安を守り、周囲に配慮するよう呼びかけた。臭いへの感じ方には個人差があるため、「清潔か不潔か」という評価だけでは処理できない。

企業や自治体の担当者には、特定の従業員を名指しする前に、換気、座席配置、喫煙後の対応、香り付き製品の使用ルールなど、環境面から改善できる事項を確認する手順が必要になる。個別対応が避けられない場合も、直属の上司だけで判断せず、人事・労務担当者や産業保健スタッフを介し、非公開の場で事実と業務への影響を伝えることが基本となる。日本ハラスメントリスク管理協会の550人調査は、臭いをめぐる沈黙が、集中力低下だけでなく、職場内の接触や意思疎通にも影響していることを示した。

出典

 一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会「職場の臭い(におい)に関する実態調査」
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000073801.html

厚生労働省「あかるい職場応援団 パワーハラスメントとは」
URL:https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/harassment_list/power-hara/

消費者庁「知ってください!その香り困っている人もいます」
URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20260216/

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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