1.DPI日本会議が、障害のある女性3人の出産・子育てを扱った全国集会分科会の報告を公表した。
2.産婦人科での受診拒否に近い対応、ヘルパー利用の制限、本人不在での母子分離などが報告された。
3.障害者権利条約は、親の障害だけを理由とする親子分離を認めず、子育てに必要な援助の提供を定めている。

認定NPO法人DPI日本会議は2026年6月19日、5月31日に開いた第41回DPI日本会議全国集会の障害女性分科会「障害者の子育ての権利を問う―今も残る優生思想の中で―」の報告を公表した。全国集会は5月30、31日の2日間にわたり、全国から約200人が参加。分科会では、肢体不自由、視覚障害、知的障害のある女性3人と相談支援専門員が、妊娠、出産、育児の過程で経験した医療機関や児童相談所との対応を語った。
脳性まひのある斎藤恭子さん=仮名=は、ヘルパーを利用して育児する準備をしていたが、病院と児童相談所から虐待のおそれがあると判断され、生後6日目に子どもと分離されたと報告した。子どもは10日目に戻ったものの、自宅マンションを退去して実家で暮らすよう迫られたという。実家はバリアフリー住宅ではなく、本人にとって生活しやすい環境ではなかった。報告をまとめたDPI常任委員のたにぐちまゆ氏は、障害やひとり親であることを理由に、育児能力が先回りして否定された事例として伝えている。
視覚障害のある尾濱由里子氏は、最初に受診した産婦人科で育児方法や遺伝について繰り返し問われ、支援できないと告げられたため転院したと説明した。出産後も、入院中や保育所送迎でヘルパーを利用できず、報道機関への働きかけなどを経て利用に至ったという。知的障害のある宮本加代子氏は、医療的ケアを必要とした子どもが乳児院で3歳まで暮らし、面会制限や担当者間の引継ぎ不足によって、家族で暮らす準備が進まなかったと振り返った。相談支援専門員の松尾芳美氏は、本人が出席しない会議で母子分離の方針が決められたと報告している。公開記事には、関係した医療機関や児童相談所側の見解は掲載されていない。
障害者権利条約第23条は、障害者が家族を形成する権利を認め、子の養育責任を果たすための援助を締約国に課している。親子分離は、権限のある当局が法定手続と司法審査の下で、子どもの最善の利益のために必要と判断する場合に限られ、親または子どもの障害だけを理由としてはならない。国連障害者権利委員会も2022年、日本に対し、障害のある親を含む家庭へ早期介入と包摂的な子育て支援を提供し、障害を理由とする家族分離を防ぐよう勧告した。
児童の安全確認と親の権利保障は、どちらか一方を選ぶ問題ではない。虐待リスクを検討する場合でも、障害名や日常生活動作だけで育児能力を推定せず、利用できる介助、住環境、家族以外の支援者、本人の意思を具体的に確認する必要がある。DPI日本会議の分科会が示した3人の経験は、産科医療、児童相談所、障害福祉の各機関が、母子分離の前にどの支援を組み立てたのかを記録し、本人を意思決定に参加させる手順の点検を迫っている。
DPI日本会議「『障害者の子育ての権利を問う―今も残る優生思想の中で―』DPI全国集会『障害女性分科会』報告・感想」
URL:https://www.dpi-japan.org/blog/events/20260531-women-2/
DPI日本会議「第41回DPI日本会議全国集会を開催しました」
URL:https://www.dpi-japan.org/blog/events/dpi41-appreciation/
外務省「障害者の権利に関する条約」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html
外務省「障害者権利委員会による日本の第1回政府報告に関する総括所見」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448721.pdf
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