1.大分県教育委員会が、2017年策定の「部落差別解消の推進に関する学校教育指導方針」を2026年に改訂した。
2.児童生徒の実践力、教職員の指導力、学校・地域の実情に応じた取組を3本柱とし、インターネット上の人権侵害にも対応する。
3.部落問題を扱った学校は94.8%に達する一方、知識の伝達から差別をなくす行動へつなげる授業が課題とされた。

大分県教育委員会は6月17日、「部落差別解消の推進に関する学校教育指導方針」の改訂版を公表した。方針は、部落差別解消推進法の施行を受けて2017年に策定され、今回が初の改訂となる。県教委は、同法の施行から10年目となることや、2026年3月に改訂した「大分県人権教育推進計画」を踏まえ、部落問題学習を基盤とする総合的な人権教育の進め方を整理した。
改訂版の柱は、児童生徒の「人権問題の解決に向かう実践力」の育成、教職員の専門的知識と指導力の向上、学校と地域の実情に応じた取組の3点である。小学校、中学校、高校の校種間で学習内容をつなぎ、人権教育の年間指導計画に部落問題を組み込む。授業では、教職員が一方的に説明するのではなく、児童生徒が対話を通じて問題を自分に関わる事柄として考え、解決に向けた行動を選択できる学習を掲げた。
インターネット上の差別も明記した。学校は、差別的な書き込みや偏見を助長する情報を児童生徒が正しく判断できるよう、学習資料や指導案を用いた教育を行う。部落や地域に関する情報が検索、投稿、拡散される環境では、歴史的知識を教えるだけでは対応できない。情報の出所や表現の意図を検討し、差別情報を安易に共有しない判断力まで育てることが、改訂版の実務的な課題となる。
教職員研修では、部落差別解消推進法の趣旨と施行の背景を継続的に扱うほか、大分県人権問題講師団を活用した当事者らの講義、体験的・参加型の学習を盛り込んだ。県と学校は「公立学校人権教育実態調査」で取組を検証し、「就職・進学受験者アンケート」を通じて採用選考時の違反質問なども確認する。学校内の授業だけでなく、進学や就職の場面で出身地、家族、本籍など本人の能力と関係のない事項を問われる問題まで対象とした点に特徴がある。
2024年度の公立学校人権教育実態調査では、県内の小・中学校、高校で部落問題を授業で扱った割合は94.8%だった。県教委はその一方で、差別的な言葉を使った発言や落書きが起きており、授業が知識の伝達にとどまっていた面を指摘する。実施率の高さだけで教育の効果を判断せず、児童生徒の認識や行動の変化を検証する方針といえる。
教育によって新たな差別を生まないための留意事項も示した。部落差別解消推進法の参議院法務委員会附帯決議を踏まえ、教育内容や手法に最大限配慮し、特定の思想やイデオロギーに偏らない公平で客観的な教育を掲げる。地域名や出身を不用意に結び付けたり、児童生徒に当事者性の表明を迫ったりすれば、授業自体が人権侵害を生むおそれがある。大分県教育委員会は、改訂方針を校内研修、授業計画、実態調査の検証へ反映し、94.8%という実施率を差別解消に向けた具体的な行動へ結び付ける必要がある。
大分県教育委員会「部落差別解消の推進に関する学校教育指導方針」
URL:https://www.pref.oita.jp/site/gakkokyoiku/burakuhousin.html

