認定NPO法人虹色ダイバーシティは、「LGBTQの仕事と暮らし白書2026」を公開した。白書は、2022年から2024年までの3年間に実施した「LGBTQの仕事と暮らしに関するアンケート調査 niji VOICE」の累計6,593名分の回答をもとに、職場環境、生活実態、心理的安全性、メンタルヘルス、社会的つながりなどを分析したものである。3年間の経年変化に加え、SOGI、すなわち性的指向・性自認ごとの詳細な傾向も整理している。
LGBT理解増進法の施行や企業のダイバーシティ施策の広がりにより、社会全体ではLGBTQへの理解が進んでいるという見方もある。しかし、白書は、当事者の心理的安全性や心身の健康が十分に改善していないことを示している。虹色ダイバーシティは、法制度の未整備、物価高による生活不安、一部で広がるヘイトや否定的言説が、当事者の暮らしに影響していると指摘した。理解の広がりが実感としての安心につながっていない点が、今回の調査の重要な論点である。
同団体は2026年2月19日、厚生労働省で白書に関する記者発表を行い、トランスジェンダーに関する否定的言説への早急な対応、同性婚の法制化、LGBTQ支援団体への公的支援の拡充などを提言した。また、職場ではLGBTQ施策が不十分な企業も多く、差別的な言動を止めるためには、基礎知識の周知だけでなく、管理職や教職員が具体的な場面で適切に対応できる研修が必要だとしている。制度や方針を掲げるだけでは、現場での発言や対応は変わらないという問題意識がある。
人権の観点から見ると、LGBTQをめぐる課題は、個人の「生きづらさ」だけで説明すべきものではない。採用、配置、評価、福利厚生、学校生活、医療、住まい、家族関係、行政手続など、社会制度や組織運営の中にある前提が、当事者の選択肢を狭めている場合がある。特に、同性パートナーとの関係が法的に不安定なまま置かれることや、性自認をめぐる否定的言説が学校・職場で放置されることは、当事者の生活の安全や将来設計に直接影響する。
今回の白書は、企業、自治体、教育機関がLGBTQ施策を見直すための基礎資料となる。企業には、相談窓口、ハラスメント防止、福利厚生、通称名の使用、採用・評価の公正性を点検することが求められる。自治体には、相談事業や地域の居場所づくり、支援団体への継続的な支援が課題となる。教育現場では、児童生徒が性的指向や性自認を理由に孤立しないよう、教職員研修と相談体制の整備が不可欠である。6,593名の回答は、理解啓発の段階を超え、実効性ある制度整備と支援につなげる必要性を示している。
虹色ダイバーシティ
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