
全国女性シェルターネットは、離婚・別居後の子どもの「共同養育計画」と「ADR(裁判外紛争解決手続)」について注意点をまとめたパンフレットが公表されたと案内している。資料は「ちょっと待って共同親権ネットワーク」が作成したもので、共同養育計画やADRの利用が広がる一方、DVや虐待がある家族では、当事者間の力関係や安全確保の問題から慎重な対応が必要だと指摘している。全国女性シェルターネットは、女性に対する暴力の根絶を掲げ、DV被害者支援に関する情報発信や支援者向け情報の提供を行っている団体であり、今回の案内も離婚後の子どもの福祉と被害者保護をめぐる注意喚起として位置付けられる。
パンフレットでは、共同養育計画書について、離婚後の子どもの住居、養育費、親子交流、重要事項の決定方法などを父母間で合意し、書面化するものと説明している。そのうえで、相手方から作成や同意を求められても応じる義務はなく、細かい内容まで包括的に書面化すると、将来の生活や子どもの状況変化に対応しにくくなる可能性があるとしている。特に、DVやモラルハラスメントがある場合、対等な話合いが困難なまま合意形成が進むと、子どもや同居親の生活を縛る結果になりかねない。
ADRについても、裁判や調停以外で紛争解決を図る手続として利用が進む一方、当事者間に支配・服従関係がある場合には注意が必要だとしている。資料は、ADRが「迅速」「低廉」と受け止められやすい反面、いったん合意が成立すると、後から変更しにくい場合があること、DVへの理解が十分でない手続では、被害者側が不利な条件に追い込まれるおそれがあることを示している。話合いができない関係では、弁護士や家庭裁判所、法テラス、行政・支援団体などに相談することが望ましいとの視点も盛り込まれている。
背景には、2026年4月1日に施行された民法等改正がある。父母の離婚後の子の養育に関するルールが見直され、親権、養育費、親子交流、安全・安心な親子交流などの制度が改められた。こども家庭庁のひとり親家庭向けポータルサイトも、父母の離婚後のこどもの養育について、親の責務、親権、養育費、親子交流などのルールが新しくなったと説明している。制度改正は、子どもの利益を確保することを目的とするものだが、DVや虐待がある家庭では、「父母の協力」を前提にした仕組みが、かえって安全確保や被害回復を妨げる場面があり得る。
人権の観点から重要なのは、共同養育計画やADRを一律に否定・推奨するのではなく、子どもの利益、被害者の安全、意思決定の自由を具体的に確認することである。地方公共団体、支援機関、法律専門職、ADR機関には、相談者が「合意しなければならない」と誤解しないよう、制度の説明とリスクの説明を分けて行う姿勢が求められる。離婚・別居の局面では、親権や面会交流だけでなく、住まい、生活費、学校、医療、心理的安全も同時に問題となる。今回のパンフレットは、当事者や支援者が、合意書作成やADR利用の前に立ち止まり、必要な相談先につながるための確認材料となる。
全国女性シェルターネット
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