草津市「人権のつどい」38回目 LGBTQ+啓発と市制度を読み解く

この記事のポイント

1.草津市が9月23日、第38回「いのち・愛・人権のつどい」を開催する
2.杉山文野氏のLGBTQ+講演に加え、手話通訳、要約筆記、託児、送迎を用意する
3.草津市は2024年からパートナーシップ宣誓制度も運用しており、「啓発」と「行政制度」の役割は異なる

杉山文野さん、フェンシング元女子日本代表

草津市、草津市教育委員会、草津市人権擁護推進協議会は9月23日、草津クレアホールで「第38回いのち・愛・人権のつどい」を開く。元フェンシング女子日本代表でトランスジェンダー当事者の杉山文野氏が「はじめてのLGBTQ+」をテーマに講演するほか、立命館大学ライフサイエンス研究会によるサイエンスショーなどを実施する。定員650人、参加無料で、事前申込みを不要とした。

参加方法にも複数の配慮が組み込まれている。杉山氏の講演では手話通訳と要約筆記を実施し、事前申込みによる託児を用意するほか、草津市役所、南草津駅、草津クレアホールを結ぶ送迎も設ける。講演テーマの内容とは別に、障害、育児、移動手段などによって市民が啓発事業から排除されにくい設計となっている。情報保障を含めて参加条件を整えること自体が、行政による公開事業を考える際の一つの要素である。

草津市では性的マイノリティに関する取組が講演会だけにとどまっているわけではない。2024年4月1日には「草津市パートナーシップ宣誓制度」を開始した。一方または双方が性的マイノリティであるカップルが宣誓し、市が受領証などを交付する仕組みで、市営住宅をはじめ一部の行政サービスでも利用できる。2026年8月1日時点の宣誓は6件。ただし、婚姻とは異なり、相続や税制など法律上の婚姻と同じ効果が生じる制度ではない。

ここから見えるのは、「理解を広げる施策」と「行政手続上の取扱いを変える施策」の違いである。杉山氏の講演は、性的指向や性自認をめぐる知識や当事者の経験に接する機会をつくる。パートナーシップ宣誓制度は、対象となる当事者が実際に行政上の証明やサービスを利用する仕組みである。前者の参加者数が多くても制度利用上の不利益がなくなったことにはならず、宣誓件数だけでも市民の理解度を測ることはできない。二つは同じLGBTQ+施策でも役割が異なる。

第38回まで続く「いのち・愛・人権のつどい」を単年度のイベントとして紹介するだけでは、この地域的な文脈は見えにくい。草津市は9月23日の啓発事業と、2024年から運用するパートナーシップ宣誓制度を別々の手法として持っている。講演による理解促進と行政制度による生活上の対応を分けて見ることで、草津市の取組全体を具体的に把握できる。

出典

草津市「第38回いのち・愛・人権のつどい」
URL:https://www.city.kusatsu.shiga.jp/kurashi/jinken/sodankeihatu/jinken_no_tsudoi.html

草津市「パートナーシップ宣誓制度」
URL:https://www.city.kusatsu.shiga.jp/kurashi/jinken/sodankeihatu/partnership.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

人権ニュース編集部をフォローする
教育日本
シェアする
タイトルとURLをコピーしました