
板橋区は、令和8年度きょうだい児支援講演会・お話会「知ってほしいな、きょうだい児のこと~気持ちの理解と周りの大人ができること~」を、6月4日(木)に開催する。会場は板橋区立文化会館4階大会議室で、時間は午前10時から11時までが講演会、午前11時から正午までが、きょうだい児を育てる保護者向けのお話会となる。講師は「きょうだい児と家族の応援団にじいろもびーる」代表の有馬桃子氏。対象は、講演会がきょうだい児支援に関心のあるすべての人、お話会はきょうだい児を育てる保護者のみ。定員は50人、申込順で、参加費は無料。申込期間は4月27日午前9時から5月22日までで、電話または電子申請で受け付ける。共催は公益財団法人東京YWCAと板橋区福祉部障がいサービス課。
「きょうだい児」とは、障害や病気のある兄弟姉妹がいる子どもを指す言葉として使われることが多い。家庭の中で、障害のある子どもへの通院、療育、介助、見守りが優先される場面が増えると、きょうだい児は「自分も見てほしい」「兄弟姉妹のことを周囲にわかってほしい」と感じながらも、その気持ちを言葉にしにくいことがある。板橋区の案内でも、きょうだい児には「ぼくのことも見てほしいな」「みんなに兄弟姉妹のことをわかってほしい」など、さまざまな気持ちがあると説明している。今回の講演会では、きょうだい児の気持ちを理解するとともに、周囲の大人がどのように寄り添えるか、保護者自身のセルフケアをどう考えるかについて学ぶ内容となっている。
この取組の意義は、障害児支援を本人への支援だけでなく、家族全体を支える視点から捉えている点にある。障害児福祉では、療育、相談支援、放課後等デイサービス、医療的ケア、学校との連携など、本人を中心とした支援制度が整備されてきた。一方で、兄弟姉妹が抱える孤独感、我慢、将来への不安、家庭内での役割意識は、制度の中で見落とされやすい。きょうだい児は、幼い頃から家庭の事情を理解しようとし、保護者に負担をかけないよう振る舞うことがある。こうした姿勢が周囲から「しっかりしている」と評価される一方で、本人の不安や寂しさが見えにくくなることも少なくない。
人権の観点から見ると、きょうだい児支援は、障害のある子どもの権利保障と対立するものではなく、家族の中にいるすべての子どもの尊厳を守る取組である。障害のある子どもが必要な支援を受けることは当然重要だが、その過程で兄弟姉妹が自分の感情を抑え込み、相談先を持てず、将来の介護や家族責任を過度に背負うようになれば、別の形で子どもの権利が損なわれる。保護者にとっても、きょうだい児への接し方を一人で抱え込むのではなく、同じ立場の保護者と経験を共有し、専門的な助言を受ける場があることは重要である。講演後に保護者同士のお話会を設けている点は、知識の提供だけでなく、孤立を和らげる支援として意味を持つ。
今後、自治体の障害児支援では、本人支援、保護者支援、きょうだい児支援を分けて考えるのではなく、家族全体の生活を支える仕組みとして組み立てることが求められる。学校や保育施設、地域の子育て支援機関も、障害のある子どもの兄弟姉妹が抱えやすい葛藤を理解し、必要に応じて声をかけ、相談先につなぐ役割を担う。板橋区の講演会は、きょうだい児の存在を地域で可視化し、保護者や支援者が「障害児の家族」を一括りにせず、子ども一人ひとりの思いに目を向けるための機会となる。

