1.東京都は9月8日、都内のデモ行進、街頭活動、海外配信サイト上の計3件について、条例上の「不当な差別的言動」に該当すると判断した。
2.2016年施行のヘイトスピーチ解消法には直接の罰則がないのに対し、東京都条例は第三者審査を経て表現活動の概要を公表する独自制度を設けている。
3.今回、都は街頭活動を収録して拡散している動画について東京法務局に削除要請を依頼しており、街頭とインターネットをまたぐ差別的言動への対応が制度上の課題となっている。

東京都は2026年9月8日、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」に基づき、都内で行われた3件の表現活動を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に該当すると判断した。対象となったのは、2月22日に千代田区外神田から台東区台東まで行われたデモ行進、3月1日に中央区日本橋蛎殻町で行われた街頭活動、海外配信サイト「KICK」を用いた都内からの配信。朝鮮・韓国、中国、ミャンマーなどにルーツを持つ人々を日本社会から排除する趣旨や、危害を示唆する表現が含まれていた。
国法にはない「審査と公表」を条例で制度化
判断の基礎となるヘイトスピーチ解消法は2016年6月3日に施行された。同法は、国外の国・地域の出身を理由として、対象者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動の解消を国と地方公共団体の責務としている。ただし、個々のヘイトスピーチ自体に刑事罰や行政罰を科す法律ではない。相談体制、教育、啓発などを中心とする制度である。
東京都条例はこの国法とは別に、審査会の意見を踏まえて不当な差別的言動に当たるかを都が判断し、概要を公表する仕組みを設けた。2025年12月や2026年3月にも同制度による公表があり、単発の対応ではない。今回の3件についても条例第14条の審査会を経て、第12条に基づく公表に至った。
街頭だけでなく配信サイトも対象に
今回特徴的なのは、街頭で発せられた言動だけでなく、海外配信サイト上の配信中に表示された外国人への侮蔑・危害表現も対象になった点である。街頭活動が動画として再投稿されれば、差別的言動への接触範囲は現場の通行人を超えて広がる。東京都は2月22日と3月1日の活動を記録したインターネット動画について、東京法務局にプロバイダ等への削除要請を依頼するとしている。
表現の自由を保障することと、民族・国籍を理由とした排除や危害の扇動に行政がどう対応するかは区別して考える必要がある。東京都の制度は発言者への刑罰ではなく、第三者審査を経て「どの表現活動が条例上の不当な差別的言動に当たるか」を行政が公表する方式を採る。今後は、動画削除要請の結果や同種活動の再発状況を追うことで、公表制度が差別的言動の拡散防止にどこまで作用しているかを検証できる。
東京都「東京都人権尊重条例に基づき不当な差別的言動と認めた表現活動の概要等について」
URL: https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/09/2026090808
e-Gov法令検索「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」
URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0100000068
東京都「2026年3月30日 不当な差別的言動と認めた表現活動の概要等」
URL: https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/03/2026033044
ヘイトスピーチ解消法
URL: https://jinken-news.com/glossary/hate-speech-kaisho-hou/

