日本ユニセフ協会、新学期前の「こころのこえ」 子どもが気分を言葉にする入口づくり

この記事のポイント

1.日本ユニセフ協会とこども家庭庁の「こどものけんりプロジェクト」が、新学期を前に子どもの心の状態を扱う動画「いろんなまほうをかけてみよう」を公開した。
2.WHOとユニセフは、10~19歳の約7人に1人がメンタルヘルスの問題を抱え、3分の1は14歳までに現れると推計している。
3.気持ちに気付き、周囲へ伝える啓発と、深刻な不調を相談・医療につなぐ支援は役割が異なり、その接続まで含めた環境整備が課題となる。

エルモ、クッキーモンスターとジーン&ケーンが夏休み明けの不安を抱える子どもたちをやさしく応援 メッセージビデオ「いろんなまほうをかけてみよう」

日本ユニセフ協会とこども家庭庁が共同で進める「こどものけんりプロジェクト」は8月7日、子どもの心の健康を扱うメッセージビデオ「いろんなまほうをかけてみよう」を公開した。「こどものメンタルヘルスキャンペーン~“こころのこえ”をきいてみよう~」の新コンテンツで、セサミストリートのエルモとクッキーモンスター、プロジェクト応援キャラクターのジーン&ケーンが登場する。「どんなきぶんも大事」と伝え、深呼吸、会話、歌など、自分の気持ちと付き合う方法を子ども向けに示した。キャンペーンでは、ユニセフ本部が制作した50以上の日本語版コンテンツや、未就学児から小学校低学年を対象とする教材も公開している。

子どものメンタルヘルスを早期から扱う背景には、不調が表面化してから専門治療につなぐだけでは十分でないという問題がある。WHOとユニセフが2024年に公表したサービス指針によると、10~19歳の子ども・若者の約7人に1人がメンタルヘルス上の問題を抱え、精神疾患の約3分の1は14歳まで、半数は18歳までに現れると推計されている。その一方、必要なサービスにアクセスできない子どもは多い。今回の動画が担うのは診断や治療ではなく、「自分が今どのように感じているか」を理解し、言葉にして周囲へ伝える前段階の支援と整理できる。

日本では2025年、小中高校生の自殺者数が538人となり、過去最多を記録した。こども家庭庁は2026年4月に「こども・若者 自殺防止総力戦略」を公表し、早期把握、多機関連携、自治体の体制強化などを掲げている。ただし、子どもの自殺には家庭、学校、人間関係、健康、経済状況など複数の要因が関係し、「気持ちを話そう」という啓発だけで防げるものではない。動画や教材を入口としても、強い不安、継続する心身の不調、希死念慮などが把握された場合には、学校、児童福祉、医療、相談機関へ接続する別の仕組みが必要になる。

子どもの権利という面では、子どもを保護の対象だけでなく、自分の感情や困難を表明する主体として扱えるかが問われる。大人が「問題はない」と判断していても、本人が不安や苦痛を言葉にできなければ支援は始まりにくい。同時に、声を出した子どもに対して「考えすぎ」「気にしすぎ」と処理せず、必要に応じて専門支援へつなぐ受け手側の体制も欠かせない。日本ユニセフ協会とこども家庭庁が2030年3月末まで進める「こどものけんりプロジェクト」では、コンテンツの普及数だけでなく、子どもの声を受け止め、具体的な支援へつなぐ環境がどこまで広がるかも検証事項となる。

出典

公益財団法人日本ユニセフ協会「メッセージビデオ『いろんなまほうをかけてみよう』公開」
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002739.000005176.html

WHO「WHO and UNICEF release guidance to improve access to mental health care for children and young people」
URL:https://www.who.int/news/item/09-10-2024-who-and-unicef-launch-guidance-to-improve-access-to-mental-health-care-for-children-and-young-people

こども家庭庁「こどもの自殺対策」
URL:https://www.cfa.go.jp/policies/kodomonojisatsutaisaku

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人権ニュース編集部

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