奈良県で犯罪被害者支援のつどい 池田小事件から25年、遺族が子どもの安全を語る

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この記事のポイント

1.奈良県が11月24日、「犯罪被害者支援 奈良県民のつどい」を開催し、附属池田小学校児童殺傷事件の遺族が講演する。
2.11月5日には、犯罪や事故などで亡くなった人の存在を伝える「生命のメッセージ展」を実施する。
3.2026年から全国で始まる「犯罪被害者月間」に合わせ、被害者や家族への支援制度と社会的理解を広げる。

犯罪被害者支援「奈良県民のつどい」

11月24日に式典と特別講演を開催

奈良県は2026年11月24日、奈良公園バスターミナルレクチャーホールで「令和8年度犯罪被害者支援 奈良県民のつどい」を開催する。附属池田小学校児童殺傷事件で子どもを亡くした本郷紀宏さんが講演し、犯罪被害者や遺族への理解と、子どもたちの安全について考える。

式典は午後1時から3時30分までで、午後0時30分開場。奈良県警察音楽隊によるウェルカムコンサート、黙祷、主催者挨拶、表彰などが予定されている。

午後2時20分からは、本郷紀宏さんが「附属池田小学校児童殺傷事件からの教訓~子ども達の安全を守るために~」をテーマに特別講演を行う。

参加費は無料で、事前申し込みは不要となっている。

主催は奈良県、奈良県警察、公益社団法人なら犯罪被害者支援センター。奈良県内の39市町村が共催する。

講師・本郷紀宏さんの活動

本郷紀宏さんは、2001年6月8日に大阪教育大学附属池田小学校で発生した児童殺傷事件で、子どもを亡くした遺族の一人である。

事件では8人の児童が命を奪われ、13人の児童と2人の教員が重軽傷を負った。

本郷さんは事件後、子どもの安全や学校・地域の安全、生命の尊重などをテーマに講演活動を続けてきた。

奈良県の案内によると、2004年以降、全国各地で170回以上の講演活動を行っている。また、2005年には精神対話士の資格を取得し、心の悩みを抱える人のケアにも携わっている。

精神対話士とは、対話を通して相手の気持ちに寄り添い、心理的な支えとなることを目指す民間資格である。医師や公認心理師などの国家資格とは異なる。

今回の講演では、事件から25年という節目に、子どもの安全を守るための経験や教訓が伝えられる予定だ。

犯罪被害者支援は「事件後の生活」も対象

犯罪被害者支援という言葉から、刑事裁判や加害者の処罰を思い浮かべる人もいるだろう。

しかし、犯罪による被害は、事件そのものによる身体的・精神的な損害だけにとどまらない。

被害によって生活環境が変わること、仕事や学校を続けることが難しくなること、治療や相談に費用がかかること、周囲との関係が変化することなど、複数の問題が生じる場合がある。

被害者の家族や遺族にも、生活上の負担や精神的な影響が及ぶことがある。

2004年に制定された「犯罪被害者等基本法」は、犯罪被害者やその家族・遺族が尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することを基本理念に掲げている。

同法は、国や地方公共団体が犯罪被害者等のための施策を進める基礎となる法律であり、相談、経済的支援、心身の回復、刑事手続への参加など、幅広い支援制度と関係している。

2026年から「犯罪被害者週間」が月間化

2026年の奈良県民のつどいには、国の犯罪被害者支援制度の変更という背景もある。

政府は2026年3月17日、「第5次犯罪被害者等基本計画」を閣議決定した。計画期間は2026年4月1日から2031年3月31日までの5年間となる。

この計画では、従来の「犯罪被害者週間」を月間化し、毎年11月1日から12月1日までを「犯罪被害者月間」とすることが定められた。

従来は、犯罪被害者等基本法の成立日である12月1日以前の1週間、11月25日から12月1日までが「犯罪被害者週間」とされていた。

2026年からは、これを約1か月間に拡大して広報啓発活動を行う。

期間の拡大は、犯罪被害者支援について考える機会を増やすための制度上の変更である。

奈良県が11月5日に展示会、11月24日に式典と講演会を開催することも、この犯罪被害者月間の期間に合わせた取組となっている。

奈良県犯罪被害者等支援条例との関係

奈良県では、2016年4月1日に「奈良県犯罪被害者等支援条例」が施行された。

条例は、犯罪被害者等の被害の早期回復や軽減を図り、平穏な日常生活を営むことができる社会の実現を目指すものである。

県は2016年9月に「奈良県犯罪被害者等支援計画」を策定し、その後も計画の見直しを進めてきた。

県によると、県内すべての市町村でも犯罪被害者等支援条例が制定されている。

国の犯罪被害者等基本法が支援政策の基本的な枠組みを定めるのに対し、県や市町村の条例は、地域の実情に応じて支援を進める制度的な基礎となる。

被害者支援では、警察や司法機関だけでなく、自治体の福祉・住宅・教育部門、医療機関、民間支援団体など、さまざまな機関が関わる。

そのため、被害者本人が複数の窓口を何度も訪れ、同じ事情を繰り返し説明する負担が生じないよう、支援機関の連携も制度を考えるうえで大切な要素となる。

11月5日に「生命のメッセージ展」

奈良県は県民のつどいに先立ち、11月5日に「生命(いのち)のメッセージ展」を開催する。

会場は京都府木津川市のイオンモール高の原2階平安コート。午前11時から午後3時まで開催され、入場は無料、申し込みも不要となっている。

生命のメッセージ展は、特定非営利活動法人いのちのミュージアムが取り組む展示活動である。

犯罪や事故、いじめ、医療過誤などによって命を奪われた人の存在を、等身大の人型パネル「メッセンジャー」によって伝える。

メッセンジャーの胸元には本人の写真や家族の言葉を掲示し、足元には生前に履いていた靴を置く。

展示は、亡くなった人を事件の数字や記録だけで捉えるのではなく、それぞれに生活や家族、将来への希望があったことを伝える構成となっている。

事件について知る機会と、被害者一人ひとりの存在を知る機会は、必ずしも同じではない。

生命のメッセージ展は、遺族が残された人の思いを伝える表現活動であり、来場者にとっては、犯罪被害者や家族の置かれた状況について考える機会となる。

被害者への理解と「二次被害」

犯罪被害者支援を考える際には、「二次被害」という言葉も関係する。

二次被害とは、事件や事故による直接的な被害とは別に、周囲の不用意な言動や、被害者の事情に配慮しない対応などによって、被害者や家族が新たな精神的苦痛を受けることを指す。

例えば、被害者の責任を決めつける言葉、本人が望まない私生活の詮索、事実を確認しない情報の拡散などが問題となる場合がある。

被害者がどの程度の情報を周囲に伝えたいか、何について話したいかは、それぞれ異なる。

支援する側が善意で行動していても、本人の意思や状況を確認しない対応は負担となることがある。

そのため、犯罪被害者支援では、制度を整えることと同時に、被害者の意思や生活の状況を尊重する姿勢が関係する。

奈良県の相談・支援制度

奈良県では、公益社団法人なら犯罪被害者支援センターなどが、犯罪被害者や家族への相談・支援を行っている。

同センターでは、電話相談や面接相談に加え、必要に応じて警察、病院、裁判所などへの付き添い支援も実施している。

奈良県は、犯罪による精神的な負担の軽減と回復を支えるため、臨床心理士によるカウンセリングにつなぐ事業も行っている。

カウンセリングは予約制で、希望する場合は、なら犯罪被害者支援センターに相談する仕組みとなっている。

問い合わせ先は0742-26-6935で、受付時間は平日午前10時から午後4時まで。

11月24日の「奈良県民のつどい」と11月5日の「生命のメッセージ展」は、犯罪被害者支援を学ぶ入口となる催しである。

奈良県、奈良県警察、なら犯罪被害者支援センターは、犯罪被害者月間に合わせたこれらの事業を通して、被害者や遺族への理解を深める機会を設けている。

出典

奈良県「犯罪被害者支援『奈良県民のつどい』を開催します」
URL:https://www.pref.nara.lg.jp/n039/p100027.html

奈良県「犯罪被害者等支援について」
URL:https://www.pref.nara.lg.jp/n039/43654.html

URL:https://www.pref.nara.lg.jp/documents/203/20261006200117.pdf

奈良県「奈良県犯罪被害者等支援条例・計画」
URL:https://www.pref.nara.lg.jp/n039/60538.html

警察庁「犯罪被害者月間」
URL:https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/koukei/week.html

警察庁「犯罪被害者等基本計画」
URL:https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/shiryou/keikaku/index.html

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人権ニュース編集部

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