職業安定法とは

職業安定法とは、職業紹介、労働者募集、労働者供給などについて定め、労働者が能力に適した職業に就く機会を得られるようにするための法律です。公共職業安定所、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者、労働者供給事業などに関するルールを定めています。人身取引との関係では、違法な職業紹介、虚偽の求人、労働者供給、仲介者による支配や中間搾取を防ぐうえで重要な法令です。

1.職業安定法の意味

職業安定法は、仕事を探す人と人を雇いたい事業者を適切につなぐための法律です。求人、求職、職業紹介、労働者募集、募集情報の提供、労働者供給などについて、事業者が守るべきルールを定めています。

この法律の基本にあるのは、労働者が不当な支配や搾取を受けず、適切な職業選択の機会を得られるようにすることです。職業紹介とは、求人者と求職者との間で雇用関係が成立するようにあっせんすることをいいます。求人情報の提供や募集の場面でも、労働条件を的確に示すことが求められます。

人身取引の文脈で特に重要なのが、労働者供給事業の原則禁止です。労働者供給とは、供給契約に基づいて、労働者を他人の指揮命令を受けて働かせることをいいます。厚生労働省は、労働者供給事業について、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き、全面的に禁止されていると説明しています。

2.制度・法律との関係

職業安定法は、労働市場の入口を規律する法律です。労働基準法が、雇用された後の賃金、労働時間、強制労働の禁止などを定める法律であるのに対し、職業安定法は、求人・求職、職業紹介、募集、労働者供給といった、働く前後のあっせんや仲介の仕組みを規律します。

職業紹介事業には、無料職業紹介事業と有料職業紹介事業があります。民間の有料職業紹介事業を行うには、原則として厚生労働大臣の許可が必要です。厚生労働省は、職業紹介事業、労働者派遣事業、募集情報等提供事業について、雇用の需要と供給を迅速、円滑、的確に結合させるための制度として案内しています。

職業安定法では、労働条件等の明示も重要です。厚生労働省の職業紹介事業の運営関係資料では、職業紹介事業者等が求職者等に対して業務内容や労働条件を明示する際、虚偽または誇大な内容としないことが示されています。求人内容と実際の労働条件が異なる場合、求職者は不利な条件で働かされるおそれがあります。

人身取引対策との関係では、政府の「人身取引対策行動計画2022」が、労働搾取を目的とした人身取引の防止を掲げています。特に外国人技能実習生等については、労働搾取を目的とした人身取引の取締りや、関係行政機関の連携が課題とされています。職業安定法は、違法な仲介や労働者供給、虚偽求人などを防ぐ面で、この労働搾取対策と接続します。

3.人権上の論点

職業安定法を人身取引の文脈で考える際の論点は、仕事を紹介する側や仲介する側が、求職者の弱い立場につけ込み、搾取につなげることをどう防ぐかにあります。求職者は、収入がない、住まいがない、在留資格に不安がある、言葉が分からない、借金を抱えているといった事情により、不利な求人や仲介に応じてしまうことがあります。

違法な労働者供給や名ばかりの請負、虚偽求人は、労働者を支配しやすい構造を生みます。形式上は本人が応募し、働いているように見えても、実際には仲介者に管理され、賃金を差し引かれ、職場を自由に変えられず、退職や相談もできない場合があります。このような状態は、労働基準法上の強制労働や中間搾取、人身取引の問題と重なることがあります。

外国人労働者の場合、在留資格、送出機関への借金、言語の壁、雇用主への依存、家族への送金などが、搾取の背景になることがあります。求人や職業紹介の段階で実際と異なる労働条件が示されれば、来日後に劣悪な労働条件から抜け出しにくくなります。人身取引を防ぐには、雇用後の労働条件だけでなく、求人・募集・紹介・仲介の段階から監視する必要があります。

職業安定法は、人身取引対策において、労働搾取に至る入口を規律する法律です。労働基準監督機関、都道府県労働局、公共職業安定所、出入国在留管理庁、警察、外国人技能実習機構、民間支援団体が連携し、虚偽求人、違法な職業紹介、労働者供給、仲介者による支配の兆候を把握することが、被害の早期発見と保護につながります。

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