成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない人について、財産管理や契約、介護サービスの利用、施設入所などの法律行為を支援する制度です。高齢者だけを対象とする制度ではありませんが、認知症高齢者の権利擁護、財産保護、生活支援と深く関わるため、高齢者の人権を考えるうえで重要な制度です。法務省は、成年後見制度を「本人を法律的に支援する制度」と説明しています。
1.成年後見制度の意味
成年後見制度は、判断能力が不十分な人の代わりに何でも決める制度ではありません。本人の生活、財産、医療・介護、住まいに関する手続を支え、本人が不利益を受けないようにするための仕組みです。
制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。法定後見制度は、すでに判断能力が不十分になっている場合に、家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人を選ぶ制度です。本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3類型があります。
任意後見制度は、本人が十分な判断能力を持っているうちに、将来に備えて、支援してもらう人や支援の内容を契約で決めておく制度です。任意後見契約は公正証書で作成し、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。
2.制度・法律との関係
成年後見制度は、民法、任意後見契約に関する法律、後見登記等に関する法律などに基づく制度です。家庭裁判所による審判、後見人等の選任、代理権・同意権・取消権、後見登記などが制度の中心になります。民法上、成年後見人等は、本人の利益を考えながら、契約などの法律行為を支援します。
平成28年には「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が制定され、成年後見制度を必要とする人が制度を利用しやすくするための施策が進められています。同法は、認知症、知的障害その他の精神上の障害により財産管理や日常生活に支障がある人を社会全体で支え合うことを掲げています。
国は、令和4年3月25日に第二期成年後見制度利用促進基本計画を閣議決定しました。計画期間は令和4年度から令和8年度までで、「尊厳のある本人らしい生活の継続」と「地域社会への参加」を掲げ、権利擁護支援の地域連携ネットワークや中核機関の整備を進める内容となっています。
3.人権上の論点
成年後見制度の中心的な論点は、本人保護と自己決定のバランスです。判断能力が低下した人を悪質商法、財産搾取、契約上の不利益から守ることは必要です。しかし、支援の名の下に、本人の意思を十分に確認しないまま、住まい、財産、医療、介護サービスの選択が進められると、本人の生活の主体性が損なわれます。
特に高齢者の場合、認知症、単身生活、家族関係の変化、介護施設への入所、相続や財産管理の問題が重なります。成年後見制度は、財産を守るためだけの仕組みではなく、本人がどこで、誰と、どのように暮らすかを支える権利擁護の制度として理解する必要があります。
成年後見制度をめぐっては、制度利用後に本人の意思が反映されにくい、後見人の報酬負担が重い、いったん利用すると終了しにくいといった課題も指摘されています。そのため、現在の制度運用では、本人の意思決定支援、必要な範囲に限った支援、地域での相談体制づくりが重視されています。成年後見制度という用語は、高齢者や障害のある人を「代わりに決められる人」として扱うのではなく、本人の権利と生活をどう支えるかを考えるための基本用語です。