リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは

リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、「性と生殖に関する健康と権利」と訳される言葉です。妊娠、出産、避妊、月経、更年期、性感染症、性暴力、性的自己決定など、性と生殖に関わる健康と自己決定を、人の尊厳に関わる権利として捉える考え方です。近年は、Sexual and Reproductive Health and Rightsの頭文字を取って、SRHRと呼ばれることもあります。

1.リプロダクティブ・ヘルス/ライツの意味

リプロダクティブ・ヘルスは、性や生殖に関する健康を意味します。病気や障害がないことだけではなく、身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを含みます。妊娠や出産に関する医療を受けられること、避妊や性感染症について正確な情報を得られること、月経や更年期などライフステージに応じた健康課題に対応できることも含まれます。

リプロダクティブ・ライツは、性と生殖に関する事柄について、本人が自分の意思で選択し、決定できる権利を指します。子どもを産むか産まないか、いつ、何人産むか、どのような避妊方法を使うか、妊娠や出産についてどのような医療や支援を受けるかといった事柄は、本人の身体と人生に深く関わります。

この用語は、女性の健康課題として語られることが多い一方、女性だけに限定されるものではありません。男性、不妊に悩む人、性的少数者、障害のある人、若年者、高齢者、外国人なども、性と生殖に関する情報、医療、相談、自己決定に関わる課題を抱えることがあります。

ただし、妊娠や出産は女性の身体に直接関わるため、女性の身体の自己決定、医療へのアクセス、性暴力からの保護、妊娠・出産期の健康確保は、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの中心的な課題として扱われてきました。

2.制度・法律との関係

リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、1994年にエジプト・カイロで開かれた国際人口開発会議を契機に、国際的に広く使われるようになった概念です。人口政策を国家の数値目標として扱うのではなく、個人の健康、尊厳、自己決定を重視する方向に転換した点に特徴があります。

日本では、男女共同参画基本計画や女性の健康施策の中で、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点が取り上げられてきました。思春期、妊娠・出産期、更年期、高齢期など、ライフステージに応じた健康支援を進める際の考え方として用いられています。

関係する制度は一つに限られません。母子保健法、母体保護法、刑法の性犯罪規定、配偶者暴力防止法、児童福祉法、こども基本法、男女雇用機会均等法などが、それぞれ妊娠、出産、性暴力、医療、相談支援、就労との両立に関わります。学校教育での性に関する指導、自治体の相談窓口、医療機関での対応も、実際の保障に関わる要素です。

制度上の課題としては、性や生殖に関する正確な情報にアクセスできるか、医療や相談につながれるか、妊娠や出産を理由に不利益を受けないか、性暴力や避妊に関する意思が尊重されるかが問われます。法律があっても、相談しにくい環境や偏見が残れば、権利は実質的に使いにくいものになります。

3.人権上の論点

リプロダクティブ・ヘルス/ライツの人権上の論点は、自分の身体に関することを本人が決められるかという点にあります。妊娠、出産、避妊、性的関係、医療の選択は、身体の自由、プライバシー、健康、人格の尊重と結びついています。

性と生殖に関する問題では、本人の意思が軽く扱われることがあります。避妊に協力しない、妊娠や出産について周囲が強く介入する、性暴力被害を相談しにくい、月経や更年期の不調が職場や学校で理解されにくい、若年者が正確な情報にアクセスしにくいといった場面です。これらは、単なる健康問題ではなく、自己決定と尊厳の問題でもあります。

女性に対しては、「産むべきだ」「産まないべきだ」という圧力のどちらも問題になります。少子化対策の文脈で出産を促す議論があっても、妊娠や出産は本人の身体に関わる事柄であり、政策目的のために個人の選択が軽視されてはなりません。反対に、障害、貧困、年齢、婚姻状況などを理由に、子どもを持つ選択が否定されることも、人権上の問題になります。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツを守るには、医療、教育、福祉、労働、司法の各分野がつながる必要があります。性に関する正確な知識を得られること、相談しても責められないこと、必要な医療や支援にアクセスできること、性暴力やハラスメントから守られることが、性と生殖に関する権利を現実の生活の中で支える条件になります。

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