ポジティブ・アクションとは

ポジティブ・アクションとは、男女間の格差や過去の差別的な取扱いによって不利な状況に置かれている側に対し、機会を積極的に提供し、実質的な平等を進める取組をいいます。日本語では「積極的改善措置」と呼ばれます。アファーマティブ・アクションと近い意味で使われることもありますが、日本では男女共同参画や女性活躍の文脈で使われることが多い用語です。

1.ポジティブ・アクションの意味

ポジティブ・アクションは、形式的に「男女を同じに扱う」だけでは解消しにくい格差に対応するための取組です。たとえば、女性の採用や管理職登用が長く低い水準にとどまっている場合、単に「性別にかかわらず応募できます」とするだけでは、過去の慣行や職場文化によって生じた差が残ることがあります。

そこで、女性の応募を促す、管理職候補となる女性に研修や経験の機会を提供する、昇進基準を明確にする、仕事と育児・介護を両立しやすい働き方に変える、女性が少ない分野でロールモデルを増やすといった取組が行われます。こうした取組は、女性を一律に優遇するというより、これまで機会が届きにくかった人に必要な入口を整えるものです。

関連する言葉にクオータ制があります。クオータ制は、議員、役員、審議会委員、候補者などについて、一定割合を女性や少数者に割り当てる仕組みを指します。ポジティブ・アクションはより広い概念であり、数値目標、育成、採用広報、配置、評価制度の見直しなども含みます。クオータ制は、その中でも割合を明示して参画機会を確保する手法の一つです。

2.制度・法律との関係

男女共同参画社会基本法は、積極的改善措置について、男女間の格差を改善するため必要な範囲内で、男女のいずれか一方に対し、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会を積極的に提供することと定めています。この定義では、対象は女性に限られず、格差の状況に応じて男女のいずれか一方が対象になります。

雇用分野では、男女雇用機会均等法との関係が問題になります。同法は性別を理由とする差別的取扱いを禁止していますが、過去の雇用管理などによって男女労働者の間に事実上生じている差を改善するため、女性労働者に関して行う一定の措置については、法違反とはならない特例が設けられています。

女性活躍推進法も、ポジティブ・アクションと関係します。同法では、企業や国・地方公共団体が女性の採用、継続就業、管理職比率、労働時間などの状況を把握し、課題分析を行い、行動計画を策定する仕組みが置かれています。これは、単なる理念ではなく、組織ごとの格差を数値で確認し、改善策につなげるための制度です。

ただし、ポジティブ・アクションは、どのような措置でも認められるという意味ではありません。必要な範囲を超えた取扱いや、職務能力と無関係な機械的優遇は、別の不公平を生むおそれがあります。制度上も、格差の実態、目的、手段の合理性、対象となる範囲を確認しながら実施することが前提になります。

3.人権上の論点

ポジティブ・アクションの人権上の論点は、形式的平等と実質的平等の違いにあります。形式的平等は、同じルールをすべての人に適用する考え方です。しかし、過去の差別、固定的性別役割分担意識、長時間労働を前提とした職場文化、育児・介護負担の偏りなどがある場合、同じルールを適用しても、実際には同じ機会が保障されないことがあります。

女性の管理職や意思決定層が少ない状況では、「希望する女性が少ない」「候補者がいない」と説明されることがあります。しかし、その前段階で中核業務を任されていない、昇進につながる経験を積めていない、育児期にキャリアが中断される、上司から推薦されにくいといった事情があれば、結果だけを見て能力や意欲の問題とすることはできません。

ポジティブ・アクションは、こうした見えにくい障壁を取り除くための手段です。人権の視点では、女性を特別扱いするかどうかではなく、性別によって機会が偏ってきた構造をどのように是正するかが問われます。採用、配置、育成、昇進、会議での発言機会、政策決定への参加など、どの段階で格差が生じているのかを確認する必要があります。

同時に、ポジティブ・アクションは、説明可能性を伴って実施される必要があります。なぜその措置が必要なのか、どの格差を改善するためなのか、どの範囲で行うのかを明確にしなければ、誤解や反発を招きやすくなります。格差の実態を示し、必要な範囲で機会を補う取組として設計することが、実質的なジェンダー平等につながります。

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