不同意性交等罪とは

不同意性交等罪とは、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせたり、その状態にあることに乗じたりして、性交等を行う犯罪です。2023年の刑法改正により、従来の強制性交等罪・準強制性交等罪が再構成され、刑法177条に不同意性交等罪が定められました。

1.不同意性交等罪の意味

不同意性交等罪は、被害者が自由な意思で性的行為をするかどうかを決められない状態で、性交等を行うことを処罰する犯罪です。

ここでいう「性交等」には、性交、肛門性交、口腔性交のほか、膣または肛門に身体の一部や物を挿入するわいせつな行為も含まれます。2023年改正では、この「性交等」に当たる行為の範囲も見直されました。

不同意性交等罪で中心になるのは、単に「同意があったか、なかったか」という形式的な確認ではありません。暴行や脅迫、アルコールや薬物の影響、睡眠、恐怖、虐待による心理的反応、職場・学校・家庭などの関係性による圧力などによって、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが難しい状態にあったかが問題になります。

2.制度・法律との関係

刑法177条は、刑法176条の不同意わいせつ罪で列挙された行為・事由により、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせたり、その状態にあることに乗じたりして、性交等をした者を処罰すると定めています。法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。

同条は、婚姻関係の有無にかかわらず成立することも明記しています。夫婦や交際相手であっても、相手の性的自由や性的自己決定権を侵害する行為は、刑法上の性犯罪となり得ます。

16歳未満の者に対して性交等をした場合も、不同意性交等罪の対象になります。ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、行為者がその者より5歳以上年長である場合に処罰対象となります。この規定は、いわゆる性交同意年齢の引上げと関係するものです。

3.人権上の論点

不同意性交等罪の人権上の論点は、性的行為に関する自由な意思決定を、刑法がどのように保護するかにあります。性暴力は、身体の安全だけでなく、人格、尊厳、プライバシー、自己決定に深く関わる侵害です。

従来の強制性交等罪や準強制性交等罪では、暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能といった要件の解釈をめぐり、被害の実態を十分に捉えられていないという批判がありました。2023年改正は、「なぜ抵抗できなかったのか」ではなく、「自由な意思決定が困難な状態だったか」に焦点を移した点に特徴があります。

ただし、条文が変わっても、被害者が被害を申告しやすい環境、捜査・裁判で二次被害を防ぐ運用、学校や職場での性暴力防止教育がなければ、制度の効果は限られます。不同意性交等罪は、処罰規定であると同時に、性的同意と性的自己決定権を社会がどう理解するかを問う制度でもあります。

タイトルとURLをコピーしました