NCP(連絡窓口)とは

NCP(連絡窓口)とは、OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針の普及や照会対応、個別事案への対応を行う各国の窓口です。日本では、外務省、厚生労働省、経済産業省が日本NCPを構成しています。ビジネスと人権の分野では、企業活動による人権、労働、環境などの問題について、裁判以外の対話・問題解決を支援する仕組みとして理解されます。

1.NCP(連絡窓口)の意味

NCPは、National Contact Point の略で、日本語では「連絡窓口」と訳されます。OECD多国籍企業行動指針に参加する国が設置する仕組みで、企業、労働組合、市民団体、地域住民、消費者などからの照会や問題提起に対応します。

OECD多国籍企業行動指針は、人権、雇用・労使関係、環境、情報開示、腐敗防止、消費者利益、科学・技術、競争、納税など、責任ある企業行動に関する国際的な指針です。NCPは、この指針が単なる文書にとどまらず、企業や関係者に使われるようにするための実施メカニズムです。

NCPの役割は、大きく分けて、指針の普及、指針に関する照会への対応、個別事案への対応です。個別事案とは、企業の行動がOECD多国籍企業行動指針に沿っていないのではないかとして、関係者から問題提起される案件を指します。

2.制度・法律との関係

NCPは、OECD多国籍企業行動指針に参加する各国が設置する仕組みです。OECD多国籍企業行動指針そのものは、企業に直接罰則を科す法律ではありません。そのため、NCPも裁判所のように法的な判決を出したり、企業に制裁を科したりする機関ではありません。

一方で、NCPは、非司法的な苦情処理・問題解決の仕組みとして重要な役割を持ちます。問題提起があった場合、NCPは案件の受理可能性を検討し、必要に応じて当事者間の対話やあっせんを支援します。企業と労働組合、市民団体、地域住民などが、指針に照らして課題を整理し、解決策を探る場になることがあります。

日本NCPは、外務省、厚生労働省、経済産業省で構成されています。企業活動に関する国際的な責任ある行動、人権、労働、海外事業、貿易・投資などの分野が関係するため、複数の省庁が関与する体制になっています。

NCPは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」でいう救済へのアクセスとも関係します。裁判による救済とは異なりますが、企業活動による人権への負の影響について、当事者が声を上げ、対話や是正につなげる非司法的な仕組みの一つとして位置付けることができます。

3.人権上の論点

NCPの人権上の論点は、企業活動による人権への負の影響を受けた人や団体が、裁判以外の方法で問題を提起し、対話や是正につなげられるかどうかにあります。国境を越える企業活動では、被害を受けた人が企業本社のある国で裁判を起こすことが難しい場合があります。NCPは、そうした場合の一つの相談・問題提起の入口になります。

ただし、NCPは万能な救済機関ではありません。法的拘束力のある命令を出す制度ではなく、当事者の協力や対話に依存する面があります。企業が対話に応じない場合や、被害者側が手続を利用しにくい場合には、実効性に限界が出ることもあります。

そのため、NCPを理解する際には、裁判、行政機関、労働関係機関、企業の苦情処理メカニズム、市民団体による支援など、他の救済手段との関係も考える必要があります。NCPは、それらに代わる唯一の制度ではなく、責任ある企業行動を促すための非司法的な仕組みの一つです。

用語集でNCPを扱う意義は、OECD多国籍企業行動指針が単なる理念文書ではなく、個別事案に対応する窓口を伴う国際的な枠組みであることを示す点にあります。人権、労働、環境などの問題について、企業活動の影響を受けるライツホルダーがどこに声を届けられるのかを考える上で、NCPは重要な用語です。

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