レバレッジとは

レバレッジとは、企業が取引先、委託先、投融資先、業務提携先などに対して、人権への負の影響を防止・軽減するよう働きかける力を指します。ビジネスと人権の分野では、自社が直接引き起こしていない人権リスクに対して、企業がどのように影響力を使うべきかを考えるための重要な用語です。

1.レバレッジの意味

レバレッジは、もともと「てこの力」を意味する言葉です。ビジネスと人権では、企業が自社の取引関係や契約関係、資金提供、発注量、技術支援、業界内での立場などを通じて、相手方の行動に影響を与える力を指します。

たとえば、取引先の工場で長時間労働や安全衛生上の問題が見つかった場合、発注元企業は、取引先に改善計画を求める、研修を行う、納期や価格を見直す、共同で是正策を検討する、業界団体を通じて働きかけるなどの対応を取ることがあります。このように、人権への負の影響を防ぐために使う影響力がレバレッジです。

レバレッジは、単に「強い立場から命令すること」ではありません。過度な圧力や一方的な取引停止は、かえって労働者や地域住民に不利益を与える場合があります。重要なのは、相手方の行動を変え、人権への負の影響を実際に防止・軽減する方向で影響力を使うことです。

2.制度・法律との関係

レバレッジは、日本の法律上の固定された制度名ではありません。しかし、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、OECD多国籍企業行動指針、OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス、日本政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を理解する上で重要な概念です。

国連指導原則では、企業と人権への負の影響との関係は、自社が負の影響を引き起こす場合、自社が負の影響を助長する場合、自社の事業・製品・サービスが取引関係を通じて負の影響と直接関連する場合に分けて整理されます。取引関係を通じて負の影響と直接関連する場合、企業はその影響を防止・軽減するため、関係先に働きかけることが求められます。この働きかけの力がレバレッジです。

OECDの責任ある企業行動に関するデュー・ディリジェンスでも、企業は自社の事業、サプライチェーン、ビジネス上の関係における実際・潜在的な負の影響を評価し、対処することが求められます。自社だけで問題を解決できない場合でも、企業は取引先や関係先に対して、契約、調達、協議、共同改善、業界連携などを通じて影響力を行使することが考えられます。

企業実務では、レバレッジは調達方針、取引先行動規範、契約条項、監査、是正計画、研修、価格・納期の見直し、共同プロジェクト、業界団体での連携、投融資条件などに表れます。影響力が十分でない場合には、他社や業界団体、専門機関、行政機関、労働組合、NGOなどと連携してレバレッジを高めることもあります。

3.人権上の論点

レバレッジの人権上の論点は、企業が「自社の直接雇用ではない」「別会社の問題である」として、人権への負の影響から距離を置いてよいのかという点にあります。企業活動は、サプライチェーンやバリューチェーンを通じて多くの人に影響を与えます。取引関係を通じて負の影響と結び付いている場合、企業には、その影響を防止・軽減するために自社の影響力を使うことが求められます。

ただし、レバレッジの使い方を誤ると、ライツホルダーに不利益が及ぶことがあります。たとえば、児童労働が疑われる取引先との契約を直ちに打ち切れば、子どもや家族が収入を失い、より危険な労働に移るおそれがあります。労働安全衛生の問題がある現場でも、発注を突然停止すれば、下請企業の労働者が雇用を失う場合があります。

そのため、レバレッジは、取引先を罰するためではなく、人権への負の影響を実際に減らすために使う必要があります。改善計画、期限の設定、技術的支援、労働者との対話、価格や納期の見直し、救済措置、再発防止策を組み合わせることが重要です。

用語集でレバレッジを扱う意義は、人権デュー・ディリジェンスを、単なるリスク調査ではなく、企業が取引関係の中でどのように行動を変えるかという実務として理解できるようにする点にあります。レバレッジは、サプライチェーン上の人権リスクに対して、企業が責任ある行動を取るための中心的な考え方です。

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