インターネット上の部落差別とは

インターネット上の部落差別とは、被差別部落とされる地域の地名や所在地を示す投稿、特定地域や出身者に対する誹謗中傷、差別を助長する画像・動画・書き込みなどが、ウェブサイト、SNS、掲示板、動画投稿サイトなどで公開・拡散される問題を指します。部落差別解消推進法が「情報化の進展」による状況の変化を明記した背景にも、こうしたネット上の差別の広がりがあります。

1.インターネット上の部落差別の意味

インターネット上の部落差別は、部落差別がネット空間で表れる問題です。具体的には、被差別部落とされる地域の地名や所在地を示す投稿、地域の画像や地図を使った「晒し」行為、特定地域の住民や出身者を侮辱する書き込み、差別的な言葉を用いた動画やコメントなどが含まれます。

部落差別は、出身地や居住地域を理由に人を差別する問題です。インターネット上では、地名や地域情報が検索されやすく、投稿が複製・転載されやすいため、差別情報が長期間残り続ける危険があります。紙の資料や口頭の噂と異なり、ネット上の情報は、本人の知らないところで広がり、削除後も別の場所に再掲載されることがあります。

この問題で特に注意すべきなのは、差別的な意図を持つ投稿だけではありません。興味本位で地域名を調べること、まとめサイトや動画を共有すること、差別的な投稿に反応して拡散することも、結果として差別情報を広げる行為になり得ます。部落差別を説明する目的であっても、具体的な地名や所在地を不用意に示すことは避ける必要があります。

2.制度・法律との関係

部落差別解消推進法は、現在もなお部落差別が存在することに加え、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえた法律です。同法は、部落差別の解消に関し、国と地方公共団体の責務、相談体制の充実、教育・啓発、実態調査について定めています。

法務省は、部落差別解消推進法第6条に基づく調査として、法務省の人権擁護機関が把握する差別事例、地方公共団体が把握する差別事例、インターネット上の部落差別の実態、一般国民に対する意識調査を実施しました。これは、ネット上の部落差別が、従来の結婚差別や就職差別と並ぶ現在の重要な課題として扱われていることを示しています。

インターネット上の差別投稿については、内容によって、名誉毀損、プライバシー侵害、侮辱、業務妨害などの法的問題になる場合があります。法務局では、人権相談を受け付け、投稿の削除依頼の方法について助言したり、必要に応じてプロバイダ等への削除要請を行ったりすることがあります。

ただし、すべての不快な投稿が直ちに法的に削除されるわけではありません。削除や発信者情報の開示には、権利侵害の有無、投稿内容、被害者の特定可能性、公共性などが関係します。部落差別の問題では、個人を直接名指ししていなくても、地域情報の摘示そのものが差別を助長する危険を持つため、教育・啓発と相談体制の両面からの対応が必要になります。

3.人権上の論点

インターネット上の部落差別の人権上の論点は、差別情報が半永久的に残り、本人や家族、地域住民の生活に影響を及ぼす点にあります。地名や所在地がネット上に掲載されると、結婚、就職、不動産取引、地域生活などの場面で、出身や居住地を理由に不利益を受ける危険が生じます。

部落差別は、個人の能力や人格とは関係のない出身地や地域への偏見に基づく差別です。ネット上で地域名を示す行為は、単なる情報提供ではなく、差別の対象を探し出すための手がかりを広げる行為になり得ます。とくに、地図、写真、動画、住所情報、学校名、施設名などが組み合わされると、特定の地域や個人への攻撃につながる可能性が高まります。

もう一つの論点は、差別の拡散に加担しやすいことです。差別的な投稿を批判する目的で引用した場合でも、具体的な地名やURLを広げれば、結果として差別情報の閲覧機会を増やすことがあります。報道、教育、研修、SNSでこの問題を扱う際には、差別の実態を伝えることと、差別情報を再拡散しないことを両立させる必要があります。

インターネット上の部落差別をなくすには、投稿者だけでなく、閲覧者、共有者、サイト運営者、教育機関、自治体がそれぞれの立場で対応する必要があります。具体的な地名や所在地を探さない、投稿しない、共有しない、見つけた場合は相談窓口や削除手続につなぐという行動が、ネット上で部落差別を広げないための基本になります。

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