犯罪被害給付制度とは、故意の犯罪行為により死亡、重傷病、障害という重大な被害を受けた犯罪被害者やその遺族に対し、国が犯罪被害者等給付金を支給する制度です。犯罪被害者等給付金には、遺族給付金、重傷病給付金、障害給付金の3種類があります。犯罪被害による精神的・経済的打撃を早期に軽減し、被害者や家族、遺族が再び平穏な生活を営むことを支えるための制度です。
1.犯罪被害給付制度の意味
犯罪被害給付制度は、殺人、傷害などの故意の犯罪行為により、生命や身体に重大な被害を受けた人や、その遺族に対して、国が給付金を支給する制度です。犯罪被害者本人や遺族が、加害者から十分な損害賠償を受けられない場合もあるため、国による公的な支援として設けられています。
給付金には、3つの種類があります。遺族給付金は、犯罪行為によって死亡した被害者の遺族に支給されるものです。重傷病給付金は、犯罪行為によって重い負傷や疾病を負った被害者本人に支給されます。障害給付金は、犯罪行為によって障害が残った被害者本人に支給されます。
この制度は、被害のすべてを補償するものではありません。給付金の額は、被害者の年齢、収入、障害の程度、遺族との関係などに基づいて算定されます。労災保険など他の公的給付や損害賠償を受けた場合には、給付額が調整されることがあります。親族間犯罪や被害者側の事情によって、全部または一部が支給されない場合もあります。
2.制度・法律との関係
犯罪被害給付制度の根拠となる法律は、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」です。この法律は、犯罪被害者等給付金の支給などにより、犯罪被害者等の支援を行うための制度を定めています。
犯罪被害者等基本法との関係も重要です。犯罪被害者等基本法は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るため、国や地方公共団体の責務、基本的施策などを定めています。犯罪被害給付制度は、その中でも、損害回復や経済的支援に関わる代表的な制度です。
申請は、原則として申請者の住所地を管轄する都道府県公安委員会に対して行います。実務上は、警察本部や警察署が相談・申請の窓口になります。犯罪被害に遭った後、医療費、葬祭費、生活費、就労不能による収入減などが生じることがあるため、制度を知っているかどうかが、被害後の生活再建に影響します。
犯罪被害給付制度は、刑事手続とは別に設けられた支援制度です。加害者を処罰することや、民事上の損害賠償請求とは異なり、国が一定の要件に基づいて給付金を支給します。そのため、刑事裁判や民事訴訟だけでは十分に救われにくい被害後の生活上の困難を補う役割を持ちます。
3.人権上の論点
犯罪被害給付制度をめぐる人権上の論点は、犯罪被害者や家族、遺族が、被害による損失を個人の負担だけで抱え込まされないようにすることにあります。犯罪被害は、生命や身体への直接的な被害だけでなく、医療費、葬祭費、収入の喪失、転居、通院、介護、精神的苦痛など、生活全体に影響します。
被害者や遺族が加害者から十分な賠償を受けられない場合、生活再建はさらに難しくなります。加害者に資力がない、所在が分からない、民事手続に時間や費用がかかるといった事情もあります。犯罪被害給付制度は、こうした場合に、国が一定の範囲で経済的支援を行う制度として、人権保障の実務上大きな意味を持ちます。
一方で、この制度には限界もあります。給付金は被害の全額を補償するものではなく、支給対象や金額には要件があります。犯罪の種類、被害の程度、親族関係、他制度との調整などにより、支給されない場合や減額される場合もあります。そのため、犯罪被害者等支援では、給付制度だけでなく、医療、福祉、住宅、雇用、学校、心理的支援、法的支援を組み合わせる必要があります。
犯罪被害給付制度は、犯罪被害者等基本法の理念を、経済的支援の面から具体化する制度です。犯罪被害者本人、家族、遺族が、被害後の生活を立て直すためには、警察、都道府県公安委員会、地方公共団体、医療機関、民間被害者支援団体が、制度の周知と申請支援を行うことが重要になります。